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【18.04.25】 今日の朝日新聞の「記者有論」欄では、マンション問題に触れている。

住民に対する規制や監視を強化するより、開発を優先して日照権や景観保全の権利を十分に認めない行政や、法の未整備の問題がある。

反対運動で逮捕、無罪 「共謀罪」だったらと懸念 伊藤智章(編集委員)朝日新聞(記者有論) 

 低層の家やアパートが並ぶ名古屋市瑞穂区にこの春、15階建てマンションができた。高さ45メートル、突出して高い。「太陽を奪うな」。現場を見れば周辺住民の反発は理解できる。
 この建設途中に、反対運動のリーダーで薬剤師の奥田恭正さん(61)は、暴行容疑で逮捕、起訴された。
 現場監督を両手で突き飛ばし、通りかかった大型車に接触させた、というものだ。「触った覚えもない」と否定したが、取調官は「防犯カメラに映っとる」と自白を迫った。拘留は4日間に及び家宅捜査もされた。
 ところが、防犯カメラは奥田さんの後方上部にあり、手元は映っていなかった。法廷で私もカメラの映像を見た。監督が大きく手を広げて倒れこむ様子は映っていたが、奥田さんが触れた様子は見えなかった。 
 名古屋地裁は今年2月、「有罪の証拠がない」として無罪を言い渡し、判決は確定した。逮捕から1年4カ月。この間、奥田さんには刑事被告人の立場がついて回り、精神的な負担も大きかった。
 警察はもっと慎重に捜査するべきだった。だが、地元警察署の幹部は今も、「違法状態があれば取り締まる」とにべもない。
 なるほど、必要な手続きを取って所有地にマンションを建てた業者の行為は適法かもしれない。歩道を行き来して工事車両の往来をじゃまするような住民の抗議行動の方が、法に抵触する可能性もあっただろう。
 しかし、建物の高さを抑えるよう求めた住民の要望は通らず、市によるあっせんも実らなかった。やむなく街頭で反対の意思を示そうとした住民の行為は,性急に排除されなくてはいけないものだったろうか。
 警察は、業者の通報で頻繁にパトカーを出動しており、警察官から「逮捕5秒前だぞ」と警告された住民もいる。警察は当初から、建設に反対する住民側を警戒していたように見える。懸念されるのは、こうした環境に加えて、昨年、「共謀罪」法が施行されたことだ。
 奥田さんの逮捕は施行前だった。奥田さんの弁護人は「今回は実行行為(の有無)で争えたが、話し合うだけで罪に問える共謀罪ならどうなっていたか」と懸念する。昨年の国会審議では、まさに野党が「マンション反対運動も対象になるのでは」と指摘していた。
 現地では今も反対運動が続いているが、参加者は奥田さんの逮捕当時の約10人から半数程度に減った。捜査をきっかけに運動が停滞したのは否めない。こうした「萎縮効果」も共謀罪の審議で指摘されたことだ。
 各地のマンション紛争の背景には、開発を優先して日照権や景観保全の権利を十分に認めない行政や、法の未整備の問題がある。住民に対する規制や監視を強化するより、この問題に先に取り組むべきなのだ。

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