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【18.01.07】 新しい言葉「ギグエコノミー」、中日社説が紹介し批判。

中日の「ニッポンの大問題」は5回目だ。今回は、「ギグエコノミー」の吉凶。

聞き慣れませんが、「ギグエコノミー」が世界を席巻しそうです。個人が雇われずに仕事を請け負う。自由な働き方だが健全な経済を破壊しかねません。
ギグ(GIG)とは一度かぎりのコンサートなどを指す洋楽界の俗語。転じて「単発」とか「短期の仕事」を意味します。
ネットの求人サイト(仲介事業者)に登録し、単発の仕事を受注する仕組み。日本でも瞬く間に数百万人がこのネット時代の新しい仕事形態を活用しているのです。
劣悪賃金は経済壊す
翻訳、ウェブ製作、シール貼り…。フリーランスとして生計を立てる人もいれば主婦の内職まで、多様な人が多様な仕事を請け負う。企業にとっては低コストで発注できます。いずれは従業員を減らし、多くの仕事を「ギグ」へ置き換えるかもしれない。
ネット上だけで仕事の発注、受注がなされることからクラウドソーシングとも呼ばれ、働き手はクラウドワーカー。自宅など好きな場所で好きな時間に働くことができる。自由で柔軟な働き方ということはできるでしょう。
しかし、こんなニュースを覚えているでしょうか。IT企業のDeNAが運営する医療系サイトの盗用問題。他社のサイトの記事や写真を無断盗用していたとして、同社は2016年12月に謝罪し、サイト休止を明らかにしました。実は記事を書いたライターの多くがクラウドワーカーだったのです。
DeNAは「知識のない人でもできる仕事です」と仲介サイトに載せ、大量のライターを募集。実際にライターの多くは医療の専門的知識もなく、同社のマニュアルに従って他社サイトの記事を盗用して記事化していました。
さらに原稿料は千文字で数百円と異常に安く、真面目に執筆するには割が合わないひどさでした。
政府はなぜ普及急ぐ
ワーカーは雇用されているわけではないので最低賃金の保障はないし、労働者を保護する労働基準法などの適用もありません。この新しい働き方は、場所と時間の自由は「吉」といえますが、報酬や身分保障面は「凶」なのです。
ギグエコノミーの問題の本質は、報酬が極めて劣悪だと、質の悪い商品やサービスが出回る恐れがあることです。「悪貨は良貨を駆逐」するで、健全な仕事までが価格面で淘汰され、経済の秩序そのものが脅かされてしまうのです。
経済産業省は、クラウドソーシングを「ITを活用した新しい人材調達の仕組み」として支援してきました。だが、公正なルールも不十分なままに普及させている弊害が如実に表れたのです。
政府も「働き方改革実行計画」で、雇用関係によらないクラウドソーシングなど「非雇用型テレワーク」を柔軟な働き方として普及・拡大を目指している。なぜそんなに肩入れするのでしょうか。
それに触れる前に、「ギグエコノミー」にはもう一つ主役がいます。仲介事業者です。彼らはワーカーの請負代金の二割程度をシステム利用料として受け取る。雇用主ではないので、企業と違って社会保険料を負担することもなく、使用者責任も免れています。
先行する海外では、心配な事態が起きています。仲介事業者が労働者の能力を競わせたり、労働者の取り分を搾取したり…。これに対抗し、働く側の権利を守ろうとフリーランスらが組合をつくる動きも出ている。
米シリコンバレー発の配車アプリ「ウーバー」は仲介事業の代表格ですが、請負の運転手が障害者の乗車をめぐってトラブルを起こし、ロンドン市は事業認可を取り消した。行政も規制を強めているのです。
ところが日本はまるで逆を向いている。せめてクラウドワーカーらの実態を早急に調査し、著しく低い報酬を禁じた下請法を参考に最低賃金と足並みをそろえる最低報酬を定めるべきです。
「対応が遅すぎる。働き方改革の一括法案は急いでまとめ上げたくせに」との批判が聞かれます。
なぜ、政府は世界の潮流に逆らってまで「ギグエコノミー」を称賛しているのでしょうか。
一つは、成長戦略らしきものが示せない中で今後に期待できる新産業を育てたいとの思い、か。さらには育児や介護を抱えて通勤が困難な女性らへ「仕事の選択肢」を示す意味もありましょう。
働く側の選択も重要
だが真の狙いは別にあります。「世界で一番企業が活躍しやすい国」を目指す安倍政権です。雇用を流動化し、日本型雇用の見直しを進める。雇用によらない働き方や労働時間規制の抜け道となるテレワークは、その一環です。
労働に見合わない低賃金化が進むブラックな社会にならないか。働く側の選択も問われています。

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