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【17.12.14】 広島高裁 四国電力の伊方原発 差止

運転差止 火山の影響で「立地不適」 来年9月末まで

広島高裁は13日、広島・愛媛両県の住民が求めた、四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町、定期検査中)の運転差止の仮処分申請の即時抗告審で、申立を却下した広島地裁の判断を取消し、来年9月末までの運転差止を命じる決定を下しました。
野々上裁判長は「阿蘇の過去の噴火で火砕流が到達した可能性は十分小さいと評価できず、原発の立地は認められない」と判断したもの。仮処分決定は直ちに効力が生じるため、四国電は決定が覆らない限り、来年2月の定期検査が終わっても運転を再開できません。四国電は異議を申立てる方針。
四国電力伊方原発3号機の運転差止を認めた広島高裁の決定を受けて、裁判所前に「伊方3号機差止命令下る」「被爆地広島原発を止める」の垂れ幕が掲げられると、支援者から大きな拍手と歓声が上がりました。報告集会で河合弘之弁護士は「高裁での勝利はこれからの裁判の流れを大きく変える歴史的な成果だ」とのべ「火山事象に対する問題点は、全国の原発においても同様に当てはまる。他の原発でも同様に追及していく」と力を込めました。
抗告人等からは「人生を狂わせた原発事故の被害者から話を聞いて、原発反対に立ち上がりました。原発も原爆もいりません」「一人でも多く参加して原発反対の意思を伝えたいと参加しました。原発の恐ろしさを伝えていきたい」の意見が。

中日社説 広島高裁 四国電力の伊方原発 差止 火山国の怖さを説いた 

阿蘇山の巨大噴火が起きたら、火砕流が到達する可能性が否定できない。広島高裁は四国電力の伊方原発の運転差し止めを命じた。自然の脅威を甘く見る風潮こそ、3・11は戒めていたが。
「火山ガイド」と呼ばれる原子力規制委員会が策定した安全性審査の内規がある。例えば、原発から半径160キロ以内に位置し、将来、活動の可能性がある火山については、その活動が小さいかどうか調査する。
小さいと判断できないときは、噴火規模を推定する。推定できない場合は、過去最大の噴火規模を想定し、設計対応不可能な火砕流が原発に到達する可能性が小さいかどうかを評価する。
その可能性が小さいと評価できない場合は原発の立地は不適となり、原発を立地することは認められない。以上がガイドだ。当たり前のことが書いてある。
火山である阿蘇山(熊本)から、伊方原発(愛媛)までの距離は約130キロであり、同ガイドの範囲内である。だから過去最大の噴火を想定し、火砕流が原発まで達する可能性も評価せねばならない。広島高裁はいう。
<火砕流が伊方原発敷地に到達する可能性が十分小さいと評価することはできないから、原発の立地は不適であり、原発を立地することは認められない>
最大級の噴火でない場合も点検している。その場合でも大量の火山灰が降り積もることになり、やはり原発を動かすことも、そもそも立地も不可となる。何と明快な論法であろうか。
だが、同じ「火山ガイド」をテーブルに置いて、同じ問題意識を持ちながら、正反対の結論になってしまった裁判所がある。昨年4月の福岡高裁宮崎支部である。
九州電力・川内原発(鹿児島県)の運転差し止めの求めを退けた。巨大噴火の時期や規模はだれも予測することはできない。だが「火山ガイド」に従って論理展開せず、同支部は原発政策を「社会通念」で認めてしまった。
火山国であるゆえに、今回の決定は広がりを持つ。火砕流を伴う噴火は九州、東北、北海道でありうる。火山灰であれば、全国どの原発でもありうる。
福島第一原発の事故後、初めてとなる高裁レベルの原発運転差し止めの司法判断だ。理詰めの決定ではあるが、思い知らされるのは、われわれが世界有数の地震国、火山国に住んでいるということだ。

毎日社説 伊方原発差止命令 噴火リスクへの重い警告

原発の安全性への疑問が、司法界に広がっていることの証しだ。国や電力会社は重く受け止めるべきだ。
昨年再稼働した四国電力伊方原発3号機(愛媛県)について、広島高裁が運転差し止めを命じる仮処分決定を出した。高裁では初となる。
伊方原発から約130キロ西に阿蘇がある。四電は噴火で約15センチの火山灰が積もると想定したが、決定はこの想定を過少だと判断した。
そのうえで、伊方原発を安全審査で合格させた原子力規制委員会の判断は不合理だと結論付けた。
世界有数の火山国である日本は、原発と共存することができるのか。そんな根本的な問いかけが、司法からなされたと言えよう。
東京電力福島第1原発事故を受けて定められた新規制基準に基づき、電力会社は、原発から160キロ圏の火山の影響調査を義務づけられた。原発の運用期間中に噴火が起きて、火砕流や溶岩流が到達する恐れがあると評価されれば、立地不適格で原発は稼働できない。
阿蘇は約9万年前に巨大噴火(破局的噴火)を起こし、世界最大級の陥没地形(カルデラ)ができた。
四電は、より小規模の噴火を想定し、火砕流などが阿蘇から到達する可能性は十分に低いと評価した。規制委も認めた。
一方、広島高裁は、現在の火山学には限界があり、過去最大規模の噴火を想定すべきだと指摘。原発の敷地に火砕流が到達する可能性は低いとは評価できない、と判断した。
この決定に従えば、現在稼働中の九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)も停止の対象となるだろう。
周辺には、阿蘇のほか鹿児島湾など、複数のカルデラがあり、巨大噴火の影響を受ける危険性が全国の原発の中で最も高いとされる。九電は四電と同様に、運用期間中にそうした噴火が起きる可能性は十分低いと評価し、規制委も了承していた。
日本で巨大噴火が起きるのは1万年に1回程度とされている。だが、頻度が低いからといって対策を先送りすれば、大きなしっぺ返しを受けることを、私たちは福島第1原発事故で学んだはずだ。
政府や電力会社は、原発の火山対策について、さらに議論を深めていく必要がある。

日経社説 原発の火山対策への警鐘だ

四国電力の伊方原子力発電所3号機(愛媛県)について、広島高裁は来年9月末までの運転差し止めを命じる仮処分を下した。
同原発は原子力規制委員会の安全審査に合格し、昨年8月に再稼働していた。東京電力福島第1原発事故後にできた規制基準に適合した原発に対し、高裁が差し止めを命じたのは初めてだ。
いまは定期検査のため停止中で、四国電は来年1月に運転再開を予定していた。だが仮処分は直ちに効力をもつため、当面の運転再開は見通せなくなった。
原発の差し止めを求める申請は各地で起きているが、広島高裁の判断は時限措置がつく点を含め、変則的といえる。
高裁は差し止めを命じた根拠として、火山の大規模噴火に対する四国電の想定が甘く、規制委の審査も不十分だと指摘した。
伊方原発の約130キロ西には阿蘇山がある。ここで最大級の噴火が起きた場合、火砕流が原発の敷地に到達する恐れがあり、立地自体が不適切とした。
ただ、この問題は広島地裁で審理中の訴訟で争点になっている。地裁での判断を待つために、高裁は運転差し止めに期限をつけた。
四国電や規制委は、高裁が噴火対策に憂慮を示した点は重く受けとめるべきだ。差し止め期間を、噴火対策を改めて点検する猶予期間とみなし、広島地裁の訴訟などで説明を尽くす必要がある。
一方で、広島高裁は規制基準や安全審査の妥当性をめぐっては、規制委が専門的・技術的知見から総合的に判断しており、「合理的と認められる」とした。
原発の差し止め申請ではこれまでも国の安全審査の妥当性や、安全性を立証する責任は誰にあるか、住民の避難計画は適切かなどが争点になってきた。だが、裁判所が正反対の決定を下すこともあり、判断の根拠もまちまちだ。
仮処分で原発が即座に止まれば電力供給に及ぼす影響は大きい。
判例を重ねて、司法判断に一定の目安ができるのが望ましい。

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