活動日誌−活動日誌

【17.01.13】 中日新聞以外が社説でトランプ氏の記者会見に言及

みんなが不安がっている

1、朝日 トランプ氏 危うい自分中心の政治
トランプ米次期大統領が、当選から2カ月にして、ようやく初の記者会見にのぞんだ。
米国の繁栄と世界の安定をいかに目指すのか。経済政策や同盟関係などをめぐる数々の疑問にどう答えるのか。トランプ氏の肉声の説明に期待していた人々も少なくなかっただろう。
だがその口から出たのは、雇用増など「業績」の自賛と、自らへの批判や疑惑に対する容赦ない反撃の数々だった。
記者からの質問が集中したのは、ロシアがプーチン大統領の指示で米大統領選にサイバー攻撃を仕掛けたと、米情報機関が結論づけた問題だ。
情報機関の見解に懐疑的だったトランプ氏は初めてロシアの関与を認めた。一方、「プーチン氏が(私を)好きならば、資産と考える」とも述べた。
情報機関も間違いを犯す。大統領として時には健全な距離を保つことも重要だ。大国ロシアと安定した関係を目指すのも当然のことだろう。
しかし、ロシアがサイバー攻撃や虚偽ニュースによる世論工作で他国の選挙に介入したのが事実なら、民主主義の根幹を揺るがしかねない深刻な事態だ。
トランプ氏がむしろ問題視したのは、ロシアがトランプ氏をめぐる「不名誉な情報」も入手していたとする疑惑の報道だった。報じた米メディアに非難の矛先を向け、その記者の質問も拒んだ。
報道が誤りなら筋道立てて反論し、正せばいい。ところがトランプ氏の対応は、本質的な問題に目をつぶり、自らの疑惑の取材は封じようとするものだ。民主国家の政治家にあるまじき態度というほかない。
トランプ氏は一部の米自動車大手がメキシコへの工場移転計画を見直したことを自賛した。「最も雇用をつくる大統領になる」と自信を示した。
これも合理的な政策の結実ではなく、ツイッターで「高い税金を払わせる」など一方的な批判を重ねた結果にすぎない。露骨な保護主義が長期的には米国の消費者や企業の不利益につながるのではないか。そんな懸念にトランプ氏は答えない。
不動産などの自分の事業は2人の息子に引き継ぐという。だが、親族への委譲で利益相反を回避できるか、疑念が残る。
記者会見で浮き彫りになったのは、説明責任を果たさず、政治倫理に無頓着なまま、「自分」にとって得か損かを基準にするトランプ氏の考え方だ。そんな「自分第一主義」からの決別を促すために、議会やメディアが果たすべき責任は重い。

2、読売 トランプ氏会見 事実誤認に基づく対日批判だ
日米貿易摩擦が過熱していた時代から、頭が切り替わっていないのではないか。貿易赤字を絶対悪とする過去の物差しに基づく対日批判は看過できない。
トランプ次期米大統領が昨年11月の当選後初の記者会見で、「米国の貿易は最悪だ」と述べ、中国、メキシコ、日本に対する貿易赤字を問題視する立場を示した。
日米経済関係は、日本が輸出攻勢をかけ、貿易不均衡の是正が両国間の大きなテーマだった1980〜90年代から様変わりした。
今月初めにトランプ氏の標的にされたトヨタ自動車は、米国に10工場と1500の販売店を持ち、13万6000人を雇用する。
日本の対米直接投資は、英国に次いで2番目に多い。米経済を潤す側面を軽視し、事実誤認の発言を繰り返すのは、見識と品位を欠く。貿易赤字は、米国の消費市場が巨大である結果と言える。
トランプ氏は「最も偉大な雇用創出者になる」と強調したが、失業率は4・7%で、「完全雇用」に近い。支持者の期待に応える手立ては、外国たたきではなく、賃金上昇と格差是正だろう。
理解し難いのは、日本を中露と同列に挙げて、「すべての国は、歴代米政権に対するよりも、ずっと大きな敬意を我々に払うようになる」と語ったことだ。
同盟国と潜在的な脅威である国を無造作に並べ、強硬策によって一律に従わせられるという傲慢な思想は受け入れられない。
米政府は、ロシアがサイバー攻撃で大統領選に介入したと断定した。トランプ氏は懐疑的な見方を改め、初めて露の関与を認めた。一方で、プーチン大統領との友好関係は「財産になる」とし、テロ対策での連携に意欲を見せた。
民主主義を侵害するロシアの行為を容認したまま、どうやって関係を改善するつもりなのか。
選挙公約に関しては、オバマ政権が作った医療保険制度「オバマケア」を廃止し、別の仕組みに替えると表明した。メキシコとの国境に壁を築き、費用をメキシコ側に支払わせる方針も確認した。
強引に進めれば、オバマケアの恩恵を受ける人々や中南米系移民の怒りが爆発するだろう。
トランプ氏は歴代大統領と異なり、当選後すぐに記者会見を行わず、ツイッターで攻撃的な発信を続けてきた。自らを批判するメディアとの対決姿勢も強める。
目標に掲げる「国民の団結」や「世界に尊敬される米国」は、これでは実現できまい。

3、毎日 トランプ会見 メディア差別は許されぬ 
驚くべき光景だった。
米国のトランプ次期大統領が当選後初の記者会見を開いたのはいいが、挙手した米CNNの記者に対し、CNNは「偽ニュース」を流したとして質問を拒否した。
この記者がトランプ氏に「あなたは(ツイッターでも)我々を攻撃している。質問の機会を与えるべきだ」と食い下がったのは理解できる。
それでもトランプ氏は「わきまえなさい」「質問は受けない」などと拒み通した。民主国家の最大都市ニューヨークで、トランプ氏は独裁国家の指導者のように振る舞った。
事の起こりは、米大統領選を標的としたサイバー攻撃に関して、トランプ氏の弱みになりうる個人・金融情報をロシアが握った可能性があるとCNNなどが報じたことだ。
この報道をトランプ氏が否定するのはかまわないが、報道したメディアの質問を拒む権利はない。「偽ニュース」ならなおさら、質問させて堂々と答えた方が、あらぬ疑いを持たれずに済むはずだ。
大統領選では不正確な報道があまりに多かったと語るトランプ氏は昨年11月の当選後、記者会見は開かず、主にツイッターで発言してきた。このため重大な事柄が一方的に発信され、質問もできない状況が続いた。
20日の大統領就任式まで1週間。オバマ大統領は既にお別れ演説を済ませ、次期大統領の求心力が強まっている。権力の移行期にあたってトランプ氏は責任を自覚し、発言内容や発信の仕方に注意すべきである。
権力者とメディアの間にはしばしば摩擦が生じる。
共和党の故レーガン大統領は1980年代、イランへの武器売却が絡む事件への関与を問われ、大統領周辺を取材する記者たちを、血のにおいに狂奔するサメにたとえた。米議会の調査委員会は結局、大統領の責任を認め、レーガン氏はテレビでの釈明を余儀なくされた。
2004年にはブッシュ共和党政権が、イラク戦争を批判した女性記者の質問を受けなくなった。この記者は会見場の最前列に座り、真っ先に質問するのが慣例だったが、席も後列へ下げられた。イラク戦争当時のメディアへの圧力の例として語り継がれている出来事だ。
メディアが正確な報道に努めるのは当然だが、それは時に権力者にとって都合が悪い。だからといって権力側が特定の記者を排除し差別すれば、論調の誘導から事実上の言論統制にもつながり、民主社会の衰退を引き起こすのは自明である。
トランプ氏はまもなく超大国の最高権力者になる。この際、権力者批判を含めた「報道の自由」の価値を、しっかり認識してほしい。

4、日経 トランプ氏は疑問にきちんと答えよ
言いたいことをまくし立てるだけならば、ツイッターと同じだ。トランプ次期米大統領が当選後初の記者会見を開いたが、世界の人々の疑問はほとんど解消されなかった。相手を疑心暗鬼にさせ、心理戦で優位に立つのは権力者の常とう手段だが、振り回される側はたまったものではない。
米国の歴代大統領は初当選後ただちに記者会見を開き、所信や政策を明らかにしてきた。現職のオバマ氏は3日後。その前のブッシュ氏は当選確定に時間がかかったこともあり2日後だった。
ところが、トランプ氏は2カ月以上も記者会見に応じなかった。ツイッターによる一方的な情報発信は世論操作には好都合かもしれないが、不愉快な質問にもきちんと答えるのが、超大国の指導者の責務である。
会見の中身もお粗末だった。事業を続けつつ、公職に就くと公私混同、利益相反が起きるのではないか。その疑問に答えるはずが、経営を長男らに任せると述べたにとどまった。
補足した弁護士は株式の売却などは否定した。だとすれば、事業は引き続き最大株主であるトランプ氏の影響下にある。外国企業との取引を有利に進める観点から外交政策を判断するのではないか、などの懸念は払拭されない。
大統領選で敗れたヒラリー・クリントン氏の陣営へのサイバー攻撃をしたのは「ロシアだと思う」と明言した。他方で米ロの関係改善に意欲を示した。トランプ陣営がメールのハッキングに関与していなかったとしても、「敵の敵は味方」的なもの言いは米国内の分断を一段と深めよう。
残りは日ごろのツイッター発言の繰り返しだった。トランプ氏の口先介入に屈して外国移転をやめた企業を称賛する一方、「好き放題やっている企業には高い国境税をかける」と脅しをかけた。これで本当に「最も多くの雇用をつくり出す大統領」になれるのか。統制経済は成長を阻害する。
日本は相変わらず米国に貿易赤字をもたらす国として、中国やメキシコと同列に扱われた。これでは、安倍晋三首相がいの一番に会った意味がない。日米同盟の価値をどうやって理解させるのか。月末に見込まれる日米首脳会談は極めて重要になる。
トランプ氏の本質は当選後も変わらない。初会見でそれはわかった。激動への備えが必要だ。

5、産経 トランプ氏会見 保護主義加速を懸念する 
「米国第一」の看板を掲げて乱暴な物言いを繰り返す。トランプ次期米大統領による当選後初めての記者会見に、自らの政策への理解を国内外に求める真摯さが見られなかったのは残念だ。
特に心配されるのは経済である。1週間後には正式就任するというのに、保護主義的な言動を改める変化はみられない。むしろその傾向に拍車がかかっているようにも映る。
世界の自由貿易を牽引する。そうした米国の責務を果たす気があるのか。全世界の懸念にトランプ氏は明確に答えてほしい。
会見では、米国に巨額の損失を与える貿易相手国として、中国やメキシコとともに日本を名指しで挙げた。貿易摩擦が深刻化した1980年代から90年代の発想に凝り固まっているかのようだ。
輸入は損で輸出は得−といった単純な構図で貿易を捉えるのは、明らかに時代錯誤だ。海外からの質の高い製品の流入が、米国民の生活を豊かにしている面をどう考えているのだろう。
各国経済の相互依存が強まっているのに、そこには目を向けずに貿易上の軋轢が生じていると強調する。それが、米経済に資するとは到底思えない。
海外に生産拠点を移す企業への強硬姿勢も相変わらずだ。
フォード・モーターがメキシコでの新工場建設を撤回したのを成果と捉えてか、「最大の雇用創出者になる」と胸を張った。だが企業経営への不当な介入を前提とした政策など、受け入れられるものではない。
極めておかしいのは、トランプ氏が自由貿易の意義を認めないまま、損得勘定による「取引」を進めようとしている点である。民主主義などの普遍的価値や国際秩序の維持よりも、近視眼的な実利を優先させていないか。真の「得」になるとも思えない。
トランプ氏が中国について「南シナ海の要塞化」を批判したのは妥当だが、中国やロシアとの関係をどう構想し、世界の平和と安定にどう寄与していくかについて、はっきりした考えは見えない。
ツイッターを通じて一方的な情報発信を繰り返し、ほぼ半年ぶりの会見となった。気に入らない報道機関の質問は無視する。大国の指導者にふさわしい態度でないのはもちろん、資質に疑いを抱かせかねないことに気付くべきだ。

しんぶん赤旗は、「ロシア」と「オバマケア」について

トランプ次期大統領会見ハッカー攻撃「ロシアがやった」医療制度「オバマケア廃止」
【ワシントン=洞口昇幸】トランプ次期米大統領は11日にニューヨークで行った記者会見で、過激組織ISの対策の一環としてロシアとの関係を改善する意向を示しました。また、オバマ現政権の大きな実績の一つである医療保険改革制度(オバマケア)の廃止と新制度への置き換えを言明しました。              
トランプ氏は、これまでロシアの介入に懐疑的な見方を示していた大統領選の期間中に米国に対して行われたハッカー攻撃について、「ハッキングしたのはロシアだと思う」と認める一方で、「しかし、われわれは他国からもハッキングを受けている」と述べました。
トランプ氏は、「ロシアとはひどい関係なので、もし(ロシア大統領の)プーチン氏が私を好めば、それは不利ではなく利点だと思う。ロシアはわれわれのISとのたたかいを支援することができる」と語り、プーチン大統領との良好な関係を望む考えを示しました。
事実上の国民皆保険制度の実現を目指して、保険加入を国民に義務付けたオバマケアについて、トランプ氏は「完全に全体的に失敗だ」と主張。「(オバマケアの)廃止と置き換え、それは同時が基本だ」と述べ、連邦議会に廃止と新制度の置き換え法案を通過させることを呼びかけました。
トランプ氏はオバマケアを一部維持すると発言したことがあります。ただ、今回の会見では新制度の内容を明らかにせず、「より費用のかからない、より良い医療にするつもりだ」と述べるにとどめました。
トランプ氏は世界各地で事業を展開しています。経営者としての判断と、国益を追求する大統領の職務が「利益相反」にあたる可能性が指摘されていたため、記者会見で事業経営を息子らに委ねると発表しました。
会見が行われたトランプ・タワー周辺には数十人のデモ隊が集まり、「トランプを排除せよ」と書かれた垂れ幕を掲げました。

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