活動日誌−活動日誌

【16.10.28】 南スーダンPKO 派兵延長

詭弁という他ない

 南スーダンPKO(国連平和維持活動)をめぐり、安倍政権は、今月末で期限が切れることになっていた自衛隊の派兵期間を来年3月末まで延長することを閣議決定しました(25日)。
 その際、「派遣継続に関する基本的な考え方」(以下、「考え方」)と題する文書も発表しました。南スーダンの内戦状態が深刻化し、日本国民の懸念や反対の声が強まる中、派兵延長を正当化するのが狙いです。しかし、安倍政権の「考え方」は、世界では通用しない全くの詭弁であり、逆に派兵延長の道理のなさを浮き彫りにしています。
 「考え方」は、南スーダン情勢について「治安情勢は、極めて厳しい」「現在も、地方を中心に、武力衝突や一般市民の殺傷行為が度々生じている」「首都ジュバについても、七月に大規模な武力衝突が発生」「今後も、南スーダンにおいて『武力衝突』の発生は十分に予想される」と指摘しています。
 ところが、「考え方」は、こうした南スーダンの実態を認めつつ、「我が国における、法的な意味における『武力紛争』が発生したとは考えていない」と述べます。「武力衝突」は発生しているが、「武力紛争」は発生していないという驚くべきごまかしに他なりません。

 PKO法は、▽「武力紛争」停止の紛争当事者間の合意(停戦合意)▽紛争当事者のPKOと自衛隊参加への同意(受け入れ同意)▽PKOの中立的立場の厳守(中立性)▽以上の原則のいずれかが崩れた場合の自衛隊の撤収▽必要最小限の武器使用―という「PKO参加5原則」を定めています。

 南スーダンでは2013年12月に大統領派と副大統領派(当時)の対立で内戦状態に陥りました。昨年8月に「和平合意」したものの、今年7月には自衛隊が駐留する首都ジュバで戦車や攻撃ヘリなども使った大規模な戦闘が起き、数百人が死亡しました。両派の戦闘はその後も続いており、「武力紛争」以外の何物でもありません。
 前副大統領は「和平合意は崩壊している」と語っており、「PKO参加5原則」の紛争当事者間の「停戦合意」は完全に崩れています。国連安全保障理事会は8月、「文民保護」を理由に事実上の先制攻撃の権限を与えたPKO部隊の増派を決めました。そもそも「中立性」の原則も成り立っていません。
 PKO法に「武力紛争」の定義はありません。しかし、「考え方」は、「武力紛争」を「国家又は国家に準ずる組織」の間の「戦闘行為」に限定し、前副大統領派は「武力紛争の当事者(紛争当事者)となり得る『国家に準ずる組織』」ではないとして、「PKO参加5原則」は維持されているとしています。あまりにも独善的な暴論です。
 安倍政権は、戦争法の一環として改定したPKO法に基づき、11月に派兵する自衛隊の交代部隊に、武器を使って他国のPKO兵士らを救助する「駆け付け警護」などの新任務付与を狙っています。
 同法は改定の際、「駆け付け警護」の武器使用について「受け入れ同意が安定的に維持されていること」を前提にしました。しかし、南スーダンでは、政府軍によるPKOへの攻撃など敵対行為が頻発しています。

 新任務の付与など論外であり、派兵延長はやめ、人道・民生支援こそ強化すべきです。

派遣継続に関する基本的な考え方 (平成28年10月25日)

                         内閣官房 、内閣府 、外務省 、防衛省

【情勢】
1、南スーダンは、最も新しい国連加盟国であり、独立から間もない、世界で一番若い国である。
反政府勢力の存在や、部族間の対立があること、また、約二十年にわたるスーダンとの武力紛争を経て独立に至ったが、その間に使用された多数の武器が国内に出回っていることなどから、治安情勢は、極めて厳しい。
現在も、地方を中心に、武力衝突や一般市民の殺傷行為が度々生じている。
首都ジュバについても、七月に大規模な武力衝突が発生しており、現在は、比較的落ち着いているが、今後の治安情勢については、楽観できない状況である。
政府としても、邦人に対して、首都ジュバを含め、南スーダン全土に「退避勧告」を出している。これは、最も厳しいレベル四の措置であり、治安情勢が厳しいことは十分認識している。

【PKO】
2、このような厳しい状況の中、南スーダンは、自らの力だけでは平和と安定を確保することができない。
だからこそ、国連による平和維持活動が行われており、我が国も、専門的な教育訓練を受け、厳しい環境でも活動できる自衛隊を派遣している。
国連の旗の下、国際社会が協力して、南スーダンの平和と安定のため力を合わせている。
アフリカの国々だけではなく、
例えば、国連 安保理 常任理事国の米国、英国、ロシア、中国、
地域毎に見ても、
アジアからは、韓国、ベトナム、インドネシア、モンゴル、ネパール、キルギス、タイ、ミャンマー、そして、ブータン、
大洋州からは、オーストラリア、ニュージーランド、そして、フィジー、パプア・ニューギニア、サモア
北米からはカナダ、
南米からはブラジル、ペルー、アルゼンチン、
欧州からは、ドイツ、オランダ、ノルウェー、スウェーデン、デンマーク、スイス、ポーランド、
また、自らも困難な状況にあるウクライナも派遣している。
まさに、世界のあらゆる地域から、六十二か国が部隊等を派遣し、南スーダンのために力を合わせている。
七月の衝突事案の後も、部隊を撤退させた国はない。むしろ、国連は、新たに四千人の地域保護部隊を創設し、増派を決めるなど、国際社会は取組を強化している。

【意義】
3、南スーダンは六カ国と国境を接し、アフリカ大陸を東西南北に結ぶ、極めて重要な位置にある。南スーダンの平和と安定は、南スーダン一国のみならず、周辺諸国の平和と安定、ひいてはアフリカ全体の平和と安定につながるものである。
また、アフリカの多くの国が苦しんでいる不安定と治安の問題を解決するという意味で、アフリカ全体の「希望」につながるものである。このような意味で自衛隊派遣は大きな意義があると考えている。
このような自衛隊派遣は、南スーダン政府や国連をはじめ、国際社会から高い評価を受けている。
今や、いかなる国も、一国だけでは自国の平和を守れない。一国平和主義ではいられない。国際社会の平和と我が国の平和は、分かち難いものである。
だからこそ、自衛隊は海外でリスクを負いながらも、国際社会の平和と安定のために貢献している。

【派遣の判断要素】
4、自衛隊を派遣し、活動を継続するに当たっては、大きく、二つの判断要素がある。
まずは、要員の安全を確保した上で、意義のある活動を行えるか、ということであり、 もう一つは、PKO参加五原則を満たしているか、という憲法との関係の判断である。

【自衛隊の活動】
5、自衛隊の派遣は、先に述べたとおり、大きな意義のあるものであり、現在も、厳しい情勢の下ではあるが、専門的な教育訓練を受けたプロとして、安全を確保しながら、道路整備や避難民向けの施設構築を行うなど、意義のある活動を行っている。
危険の伴う活動ではあるが、自衛隊にしかできない責務を、しっかりと果たすことができている。

【PKO参加五原則】
6、他方、PKO参加五原則については、憲法に合致した活動であることを担保するものである。この場合、議論すべきは、我が国における、法的な意味における「武力紛争」が発生しているか、であり、 具体的には「国家又は国家に準ずる組織の間で行われるものである戦闘行為」が発生しているかである。(これは憲法との関係であり、その意味において我が国独自の問題である。)

7、南スーダンの治安状況は極めて悪く、多くの市民が殺傷される事態が度々生じているが、武力紛争の当事者(紛争当事者)となり得る「国家に準ずる組織」は存在しておらず、当該事態は「戦闘行為」が発生したと評価し得るものではない。
また、我が国における、法的な意味における「武力紛争」が発生したとは考えていない。

8、今後も、南スーダンにおいて「武力衝突」の発生は十分に予想されるが、PKO参加五原則は、引き続き、維持されるものと考えている。
今後とも、緊張感を持って現地情勢を注視しながら、参加五原則の下で活動を行っていく。
このようなことから、引き続き、自衛隊の派遣を継続することが適当であると考えている。

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