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【15.08.02】 TPP「大筋合意」できず

各国の経済主権や国民生活より多国籍大企業の要求を優先するTPPに対し、各国で反対世論が広がった結果です。(しんぶん赤旗報道)

米ハワイ州マウイ島で開かれた環太平洋連携協定(TPP)交渉閣僚会合は7月31日夕(日本時間1日午前)、目標にしていた12カ国全体の「大筋合意」を見送り、交渉を継続するとの共同声明を発表して4日間の日程を終了しました。
各国の経済主権や国民生活より多国籍大企業の要求を優先するTPPに対し、各国で反対世論が広がった結果です。次回会合の日程は未定です。
4日間の会合で、新薬の開発データ保護期間、農産物や自動車の市場開放などをめぐって、各国の意見の隔たりが解消されませんでした。
知的財産権の分野では、新薬の開発データ保護期間をめぐり、大手製薬企業の要求を受けた米国が最先端のバイオ医薬品について「12年」を要求。後発医薬品(ジェネリック)に依存するオーストラリア、ニュージーランド、マレーシアなどが「5年以下」を求めて対立しました。
乳製品では、酪農大国のニュージーランドが米国、日本、カナダに大幅な市場開放を要求、各国の意見がまとまりませんでした。
安倍政権は、米国とともに交渉を主導するとして、各種の譲歩案を提出。伝えられるところによると、農畜産物の関税引き下げや輸入枠の拡大、米輸入の特別枠拡大などを示しました。国内農業と農村の崩壊を進め、食料の安全・安定供給を脅かすものです。
今回の閣僚会合の結果を受けて、全国農業協同組合中央会(JA全中)の萬歳章会長は1日、「重要品目に関して国内の一部報道の通りに交渉されていたとすれば、到底納得できるものではない」と日本政府の交渉姿勢を批判する談話を発表しました。
また、米国の消費者団体、パブリック・シティズンは31日、担当者の声明を発表し、「TPPが雇用、賃金、食品の安全、安価な医薬品などを脅かす」と指摘。合意が成立しなかったことは人々と世界にとって「朗報」だと述べました。
閣僚会合の共同声明は「引き続き、限られた数の残りの懸案を解決し、交渉妥結のために取り組む」と述べ、TPPを通じ多国籍大企業の利益をあくまで追求する姿勢に固執しています。

一般紙は、いずれも「きわめて残念な結果だ。各国は交渉を漂流させず継続し、あくまで早期決着をめざすべきだ。」の主旨で社説に書いている。

1、TPP見送り 自由貿易は大丈夫か 中日社説

環太平洋連携協定(TPP)交渉は大筋合意を見送った。対立はなぜ解消できないのか。東アジア経済圏での米中の主導権争いを脱し、自由貿易の原点に戻らなければ実のある合意は期待できない。
最も対立が激しかったのは医薬品の開発データの保護期間をめぐる交渉だった。
TPP交渉について、私たちは命や暮らしに影響する分野で国民が抱く不安を解消できなければ、合意には反対せざるをえないと主張してきた。医薬品開発データの保護期間は命にかかわる問題そのものといえる。
大手新薬メーカーを抱え、新薬の権利を少しでも長く守りたい米国は十二年間の保護を主張。価格の安い後発薬(ジェネリック薬)を早く広く使いたい新興国などは五年とするよう強く求めた。
新薬の開発には巨額の費用がかかる。このため米国を利益優先とばかり批判できない面もあるが、薬の価格は財政基盤が弱く保険制度が十分でない新興国、途上国の人々の命に直結している。難航した乳製品も、自由化を進めれば日本国内の酪農家の生活基盤を直撃する。懸念した通りの結果といえるだろう。
合意見送りを機に、あらためてTPP交渉を取り巻く二つの危機に目を向けたい。
ひとつは「地政学的」といわれる対立の広がりがある。
冷戦終結で世界的に民主化、自由化が進むという期待はしぼみ、ウクライナをめぐる欧州連合(EU)とロシア、東アジアでの日中、中東など緊張が広がっている。新たな対立と絡んで、TPPにはアジア経済圏をめぐる米中の覇権争いの側面が強まっており、経済のブロック化や保護主義の影が懸念される。
もうひとつは反グローバリズムの活動が示す格差の拡大がある。自由化交渉は人々の暮らしの向上よりも格差につながっているのではないかという疑問と批判だ。
1929年の大恐慌で経済のブロック化、保護主義が広がり第二次世界大戦につながった反省から、戦後は関税貿易一般協定(ガット)の下で自由貿易を推進し、世界と日本の成長の土台になった。
そのガットを引き継いだ世界貿易機関(WTO)の機能が停滞する中、自由貿易は地域対立と格差拡大という新たな危機に直面している。TPPはこの現実のなかで行われていることを忘れてはならない。 

2、TPP交渉―合意へ全力をあげよ 朝日社説

環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉が、物別れに終わった。参加12カ国の閣僚は今月中に再び会合を開く考えというが、今回の会合で掲げていた「大筋合意」にたどりつけなかった痛手は大きい。
開始から5年余り、曲折を経てきた交渉は瀬戸際にあるが、TPPを漂流させるわけにはいかない。
世界貿易機関(WTO)での自由化交渉が滞るなか、世界経済を引っ張るアジア太平洋地域で貿易や投資の自由化を進め、成長をさらに押し上げる。これは、デフレからの完全脱却を急ぐ日本はもちろん、交渉に加わるすべての国にとって欠かせない課題だ。
一方、この地域は、政治・外交面では米中2大国がせめぎ合う舞台でもある。TPPは、東アジア包括的経済連携協定(RCEP)や日中韓自由貿易協定など、中国が関わる他の通商交渉に刺激を与え、先導する役回りを担ってきた。中国を取り込み、アジア太平洋を繁栄と平和の地域としていくためにも、TPPの頓挫は許されない。
安い後発医薬品の普及を左右する新薬のデータ保護の期間と、乳製品の市場開放策。今回のTPP閣僚会合では、この二つの問題が絡み合い、解きほぐせなかったようだ。大詰めを迎えるほどに険しくなる通商交渉の難しさを改めて見せつけた。
交渉を主導してきた米国は今後、来年の大統領選を控えて政治の季節を迎える。TPPの成立と発効に不可欠な共和・民主両党の妥協が難しくなっていくだけに、残された時間は少ない。今秋に国政選挙があるカナダなど、動向が気がかりな国は他にもある。
ここは、TPP参加国の中で米国に次ぐ経済大国である日本の出番ではないか。
甘利・TPP相は閣僚会合後の共同記者会見で「もう一度会合が開かれれば、すべてが決着するだろう」と語った。実際、交渉担当者には「大筋合意まであと少しだった」との思いがあるようだ。
ならば、まずは次回会合の日程を確定させ、そこを目標に実務担当者が協議を重ねていくべきだ。甘利氏がリーダーシップを発揮し、提案してはどうか。
TPPは、自由化の水準でWTOを上回るのに加え、環境や労働者の保護と自由化との調和など、WTOが手つかずのテーマも掲げている。
21世紀型の新たな通商ルール作りという目標を見失わず、各国は不退転の決意で交渉をまとめてほしい。

3、TPP合意せず 漂流回避へ交渉再開を急げ 読売社説

環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の閣僚会合が、大筋合意を見送って閉幕した。
参加12か国は共同声明で、「TPPが妥結間近であることを確信している」と強調し、協議を継続する方針を示した。
各国の閣僚が大筋合意を期して臨んだ交渉が不調に終わったのは、極めて残念である。
甘利TPP相は次の閣僚会合について、「8月末までにというのが共通認識だ」と述べたが、日程は決められなかった。
このままでは、アジア太平洋地域に巨大な自由貿易圏を作る野心的な構想が漂流しかねない。12か国は危機感を共有し、交渉再開を急ぐべきだ。
今回の会合では、関税引き下げや投資ルールなど、多くの分野で進展した。大筋合意にかなり近づいたのは確かである。
ところが、特定のテーマで関係国の対立が解けなかった。
特に難航したのが、新薬開発のデータ保護期間を巡る交渉だ。
大手製薬会社の多い米国は「12年」を、後発医薬品を早く使いたいオーストラリアやニュージーランドは「5年以下」を主張した。日本は間を取って「8年」を提案したが、折り合えなかった。
誤算は、ニュージーランドが医薬品での譲歩を条件に、日米やカナダに乳製品の輸入枠の大幅な拡大を迫ったことである。
各国は、過大な要求を取り下げるよう説得を試みたが、ニュージーランドが強硬姿勢を崩さなかった。このため、医薬品など他の分野でギリギリの妥協を探る動きが失速したことは否めない。
大筋合意への機運が高まったのを見計らって強硬姿勢に転じ、自国に有利な決着を狙ったと受け止められても仕方あるまい。
TPPのように多国間の利害が複雑に絡む交渉では、各国が一方的に主張するのではなく、大局的な見地から歩み寄りの精神を発揮することが不可欠だ。
今回の合意見送りで、参加国間の不信感が強まる事態は避けねばならない。交渉を主導する日米を中心に、冷静で建設的な協議を継続する必要がある。
各国の政治情勢もあって、今後の展開は予断を許さない。
カナダは10月にも総選挙を控え、米国は来年1月に大統領選の予備選が始まる。日本も来年夏に参院選を予定している。
交渉が長期化するほど、各国政府が市場開放などで譲歩しにくい状況を招くことになろう。

4、TPP合意せず 交渉の推進力を失うな 毎日社説 

環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉の閣僚会合が大筋合意に達しなかった。合意への機運が高まっていただけに、好機を逸して失速してしまうことが心配だ。
ただ、閣僚会合の共同声明は「妥結が手の届く範囲内にある」とした。今月中の会合再開を目指すという。交渉の推進力を失わず、早期の合意にこぎつけてほしい。
TPPの意義は大きい。高水準の貿易自由化を進めて、アジア太平洋地域に巨大な自由貿易圏を誕生させる。投資やサービスなど幅広い分野で包括的なルールを定め、域内の経済活動をより活発化させる。
人口減少で国内市場が頭打ちの日本にとっても重要だ。アジア太平洋地域の活力を取り込めば、経済成長の基盤となる。
交渉を主導してきた米国では、合意に不可欠とされる大統領貿易促進権限法が閣僚会合前に成立した。環境が整ってきていたのに、合意に至らなかったのは残念だ。
難航した新薬データの保護期間を巡っては、米国と新興国などの溝が埋まらなかった。乳製品でもニュージーランドが日米などに大幅な輸入拡大を要求し、対立が解けなかった。日米間ではコメや自動車といった懸案が決着に至らなかった。
いずれも国益をかけた主張ではある。だが、かたくなな姿勢を貫くだけでは交渉はまとまらない。TPPは各国により大きな国益をもたらすはずだ。大局的な観点から歩み寄りを図ってほしい。
米国は来年の大統領選に向け、与野党の対立が激しくなり、貿易保護主義的な動きも強まると予想される。日本も来年夏に参院選を控える。次の会合でも合意できないと、政治的圧力から譲歩が一段と困難になり、交渉が漂流する恐れがある。
世界貿易機関(WTO)の多角的貿易交渉が暗礁に乗り上げ、各国は自由貿易協定(FTA)に軸足を移している。多くの国が参加する「メガFTA」で、TPPは交渉が最も進み、成否が注目されてきた。
合意できれば、日欧の経済連携協定(EPA)などの交渉にも弾みがつくと期待されている。だが、行き詰まれば、他の交渉も停滞する「負の連鎖」に陥りかねない。
TPPは中国をけん制する意味もある。中国はアジア太平洋地域への影響力を急速に増している。TPPによって公正で透明な通商ルールを確立することが重要だ。
これまでの交渉で課題は絞り込まれたはずだ。だが、合意に向けた日程は綱渡りだ。特に経済規模が突出する日米の責任は重い。各国が歩み寄れるように交渉を主導する必要がある。

5、TPP交渉を漂流させずに早期決着を 日経社説

日米など12カ国による環太平洋経済連携協定(TPP)締結に向けた閣僚会合は、大筋合意に達することなく閉幕した。
きわめて残念な結果だ。各国は交渉を漂流させず継続し、あくまで早期決着をめざすべきだ。
閉幕後に12カ国の閣僚が発表した共同声明は、交渉の「大きな前進」を強調したものの、なお解決できずにいる複数の懸案がある点を認めた。
その一つは医薬品の知的財産権ルールだ。巨大な製薬会社を抱える米国が医薬品のデータ保護期間を12年にするよう主張したのに対して、オーストラリアなどは5年を求めて対立し、溝を埋めることができなかった。
乳製品の貿易をめぐっても、輸出国であるニュージーランドが日本やカナダなどに大幅な輸入拡大を要求し、妥協点を見いだせなかったとみられる。
12カ国は事務レベルの交渉を続ける方針で、交渉決裂という事態は避けられた。甘利明経済財政・再生相は記者会見で「もう一度会合が開かれれば、すべて決着する」との見通しを示した。
大筋合意が視野に入っていたのは事実だろう。たとえば、知的財産権分野のうち、ワインやチーズなどの特産物につける地理的表示のルールづくりでは前進したと、フロマン米通商代表部(USTR)代表は明らかにした。
にもかかわらず12カ国が大筋合意を見送ったことで、今後の交渉妥結に向けた機運が低下するのではないか、と気がかりだ。
来年秋の米大統領選や、米議会の日程から逆算すると、年内にTPP署名までこぎ着けなければ交渉は漂流しかねない。
そうした事態を避けるためにも、新たな閣僚会合をそれほど時間を置かずに開き、各国が最後の交渉カードを切って交渉をまとめあげるべきだ。12カ国の政治的意思が欠かせない。
経済規模の大きな日米の責任は特に重い。今回の閣僚会合でも、米国産コメや日本製自動車部品といった2国間の懸案を早く決着させ、交渉全体に弾みをつけるべきだったのではないか。
TPPは世界最大の自由貿易圏をつくり、世界の貿易・投資ルールを高次元のものへと書き換えるものだ。その歴史的成果を早く出すには、日米が自国の狭い国益にとらわれず、域内全体の利益を優先して行動する必要がある。

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