活動日誌−活動日誌

【14.10.18】 昨日のリニア認可報道に続いて新聞各社は社説で意見を述べている。朝日・毎日・中日は批判的、日経でも「社内の目だけでなく、社外取締役など第三者による評価も欠かせない。」と述べている。リニアと原発の類似性、桑名では医療センターの強引な建設推進。毎日は「場合によっては立ち止まる勇気も必要だ。」と言っている。

1、朝日社説 リニア認可―拙速に進めるな

 品川―名古屋間で27年の開業をめざすリニア中央新幹線の工事実施計画を、国土交通相が認可した。JR東海は年明けにも工事に入る構えだ。
 45年までに大阪へ延伸されれば、3大都市がほぼ1時間以内で行き来できるようになる。政財界を中心に、大きな経済効果を期待する声が強い一方、東京への一極集中をさらに加速する可能性も否定できない。
 私たちは、人口減少時代に入り、地方の衰退が深刻な今の日本にリニア中央新幹線を整備するのがふさわしいかどうか、主に国土政策の観点から国に慎重な判断を求めてきた。
 だが太田昭宏国交相はきのうの会見で「人の流れが大きく変わり、国民生活や経済活動にも強い影響を与える」と開業の意義を強調した。
 国の姿勢は一貫して「リニアありき」だったといわざるをえず、残念である。
 JR東海が、全線で9兆円を超す建設費を自己負担すると決め、長らく停滞していた中央新幹線計画がにわかに動き出したのは07年だった。
 東京や名古屋周辺の都市部では大深度地下トンネルを活用し、南アルプスは25キロのトンネルで貫くという壮大な事業だ。
 11年から始まった環境影響評価(アセスメント)では、全部で6千万立方メートルを超す建設残土や廃棄物をどう処理するかが大きな問題となった。大井川(静岡県)のような重要河川の水が減ったり、南アルプスの貴重な自然や景観に影響が出たりする恐れも指摘された。
 JR東海は、残土の搬入先の確保に一定のめどを示し、環境対策には万全を期すと強調した。だが、崩落の懸念から残土置き場の再考を求めた静岡県の要請を拒むなど、計画修正にはほとんど応じなかった。不安はいまも根強い。
 工事説明会や用地買収はこれから本格化する。国交相も認可にあたり、地元住民らに丁寧に説明し、理解と協力を得るよう、JRにくぎを刺した。肝に銘じてもらいたい。
 リニア中央新幹線は、140年を超す日本の鉄道史上でも空前の難工事となろう。
 東日本大震災後、国内の人件費や資材費は高騰している。工期が延びれば、ただでさえ巨額の建設費がさらに膨らむリスクがある。JR東海としてはなんとしても予定通りに開業させたいとの思いがあろう。
 ただ、工事はあくまで安全と環境保全を最優先に進めるべきだ。27年の開業という目標ばかりにこだわってはならない。

2、毎日新聞社説 リニア着工認可 まだ議論の時間はある

 JR東海が品川−名古屋で2027年の開業を目指すリニア中央新幹線の工事に、国がゴーサインを出した。環境への影響、安全性や事業そのものの採算性など、大いに疑問を残したままの認可である。
 国民的議論を経ず見切り発車となることのないよう、私たちは求めてきた。45年に予定される大阪までの延伸分も含めると総工費約9兆円という超巨大プロジェクトだ。JR東海が全額自己負担するというが、計画が狂えば国が支援に乗り出す可能性を排除できない。一民間企業による設備投資と片付けられない重大な国家的事業なのである。
 だが結局、国会で十分審議されることも国民的な議論が起きることもなく、申請から2カ月足らずで認可が下りた。残念であり、なぜ急がねばならないのかと、首をかしげざるを得ない。
 着工認可を受け、JR東海は沿線住民への説明会や用地買収に着手する予定だ。トンネル掘削で大量に発生する残土の処理をはじめ、環境や景観への影響を特に心配する沿線住民の理解を得ることは当然である。
 同時に国民全体への丁寧な説明も不可欠だ。まだ時間はある。国会はJR東海や認可を出した国土交通相に報告・説明を求め、環境、安全性、採算性など幅広い観点から議論を尽くす責任がある。
 確かに夢を感じる話である。線路の上を走る従来の鉄道とは全く異なる超電導技術が品川−新大阪を1時間あまりで結ぶ。国内の経済波及効果や海外への輸出チャンスにも期待が膨らむ。東海道新幹線も建設前は反対があったが、造ってみたら大成功だったと、50年前を引き合いに出す推進論もあるようだ。
 だが、スピードや大量輸送に絶対的価値があった時代ではもはやなくなろうとしている。国の経済も人口もこれから伸びようという当時と、高齢化、人口減少に向かっている今は大いに違う。
 特に需要を支えるビジネス利用客の世代の人口(生産年齢人口)が2050年には今より4割近く減少すると推計されているのに、JR東海の需要予測(新幹線とリニアの合計)は、25%程度増えるというものだ。航空機利用客の移入を見込むというが、通信技術の革新などにより、約30年後、出張の需要そのものが劇的に変化している可能性もある。
 南アルプス直下を貫くトンネル工事など技術的な難関、資材や労賃の上昇、金利負担の増加など、「想定外」の現実に直面することもあろう。場合によっては立ち止まる勇気も必要だ。とはいえ、何より先にまず十分な説明と議論である。国会の役割に期待したい。

3、中日社説 リニア着工認可 一極集中の加速でなく

 JR東海が品川−名古屋で2027年の開業を目指すリニア中央新幹線の工事に、国がゴーサインを出した。環境への影響、安全性や事業そのものの採算性など、大いに疑問を残したままの認可である。
 国民的議論を経ず見切り発車となることのないよう、私たちは求めてきた。45年に予定される大阪までの延伸分も含めると総工費約9兆円という超巨大プロジェクトだ。JR東海が全額自己負担するというが、計画が狂えば国が支援に乗り出す可能性を排除できない。一民間企業による設備投資と片付けられない重大な国家的事業なのである。
 だが結局、国会で十分審議されることも国民的な議論が起きることもなく、申請から2カ月足らずで認可が下りた。残念であり、なぜ急がねばならないのかと、首をかしげざるを得ない。
 着工認可を受け、JR東海は沿線住民への説明会や用地買収に着手する予定だ。トンネル掘削で大量に発生する残土の処理をはじめ、環境や景観への影響を特に心配する沿線住民の理解を得ることは当然である。
 同時に国民全体への丁寧な説明も不可欠だ。まだ時間はある。国会はJR東海や認可を出した国土交通相に報告・説明を求め、環境、安全性、採算性など幅広い観点から議論を尽くす責任がある。
 確かに夢を感じる話である。線路の上を走る従来の鉄道とは全く異なる超電導技術が品川−新大阪を1時間あまりで結ぶ。国内の経済波及効果や海外への輸出チャンスにも期待が膨らむ。東海道新幹線も建設前は反対があったが、造ってみたら大成功だったと、50年前を引き合いに出す推進論もあるようだ。
 だが、スピードや大量輸送に絶対的価値があった時代ではもはやなくなろうとしている。国の経済も人口もこれから伸びようという当時と、高齢化、人口減少に向かっている今は大いに違う。
 特に需要を支えるビジネス利用客の世代の人口(生産年齢人口)が2050年には今より4割近く減少すると推計されているのに、JR東海の需要予測(新幹線とリニアの合計)は、25%程度増えるというものだ。航空機利用客の移入を見込むというが、通信技術の革新などにより、約30年後、出張の需要そのものが劇的に変化している可能性もある。
 南アルプス直下を貫くトンネル工事など技術的な難関、資材や労賃の上昇、金利負担の増加など、「想定外」の現実に直面することもあろう。場合によっては立ち止まる勇気も必要だ。とはいえ、何より先にまず十分な説明と議論である。国会の役割に期待したい。

4、日経社説 リニアを実現し経済効果引き出すには

 東海旅客鉄道(JR東海)による東京(品川)―名古屋間のリニア中央新幹線の工事実施計画が17日、国土交通相に認可された。同社は住民説明会や用地買収に着手し、2027年の開業をめざして巨大事業が本格的に始動する。
 リニアで期待されるのは経済効果だ。時速500キロメートルの高速性を生かし、現在は新幹線で約1時間半の東名間の移動が40分に縮まる。人の往来が増え、東名の2大経済圏の一体化が進めば、日本経済の活性化につながるだろう。
 災害に強い国づくりにも寄与する。東海道新幹線とリニアを並行して走らせることで、東名を結ぶ高速鉄道ルートは2本になる。どちらか1本が地震や津波で被災しても、バイパスを確保できる。
 超電導技術を初めて鉄道に応用する技術の先進性にも注目したい。日本が鉄道高速化の新たなフロンティアを切り開けば、海外展開も期待できる。
 ただ、実際の開通までには課題も多い。一つは建設工事に伴う環境問題だ。南アルプスを貫き、ルート全体の86%をトンネルで占めるリニア工事は大量の残土を排出する。それをどう処理するか、具体策作りはこれからだ。
 沿線河川の水量が減ったり、南アルプスの生態系に影響したりするという不安もある。JR東海が環境対策に万全を期すのは当然だ。さらに沿線の住民や自治体に積極的に情報を開示し、十分な説明責任を果たす必要がある。
 もう一つのハードルは事業の採算確保だ。半世紀前に開業した東海道新幹線の総工費は3800億円で、事業主体の国鉄の年間売上高のほぼ6割だった。
 一方、リニアの東名間の総工費は5兆5千億円で、JR東海の売上高の3倍を超える。同社の負担がいかに重いかが分かるだろう。
 こうしたリスクを背負っても、国に頼らず、自己責任で新規のプロジェクトに挑戦する同社の姿勢は評価したい。
 同時に、ビジネスである以上、事業の経済性について絶えざるチェックが必要だ。日本の少子高齢化が進むなか、今後の需要がどう推移するのか、人手不足で工事コストが膨らまないかなど、考慮すべき問題は山積している。
 社内の目だけでなく、社外取締役など第三者による評価も欠かせない。JR東海に建設資金を供給する金融機関や投資家も経営を厳しく監視していくべきだろう。

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