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【14.07.28】 今朝の朝日新聞社説より2題(製薬会社と医師(医療機関)の癒着許さぬ仕組みを、リニア新幹線―これが最良の選択か)

1、元製薬会社の社員から(武田薬品工業の平均年収は955万円、アステラス製薬は1014万円、第一三共は998万円、年収ラボより)

製薬会社と医師(医療機関)の癒着許さぬ仕組みを(国、議員にも)

製薬会社と医師、病院のもたれ合いは深刻な問題である。患者と国民を食い物にする癒着を断ち切る方策が必要だ。
製薬大手「ノバルティス」の高血圧治療薬ディオバンをめぐる論文不正問題で、東京地検は会社と元社員を起訴した。会社ぐるみの不正だった疑いがきわめて濃厚になったが、起訴の罪名は薬事法の虚偽広告などでしかなく、罰則も軽い。会社は不正で巨利を獲得し、医師らにもその一部が回る。そうした構造を土台から崩す仕組みづくりを、厚生労働省を中心に急がねばならない。
製薬会社による研究不正は、次々に明らかになっている。
国内トップの「武田薬品工業」は高血圧治療薬の臨床研究に、組織的に不適切な関与をしていたと発表した。研究結果と異なる学会発表資料をまとめ、販売の宣伝に転用していた。
「協和発酵キリン」も貧血治療薬の臨床研究で、販売促進の目的で研究計画をつくったり、データを解析したりしていた。ブリストル・マイヤーズ社員による不適切な関与も見つかった。
ひとを対象にした臨床研究で不正をし、製品を不当に売り込むのは、患者に対する裏切りであるだけでなく、健康保険の財政を傷める。つまり国民からの詐取行為といっていい。
最も注意を要する個人の病気に関する情報が、製薬会社側に漏れていたケースもあった。
なのに、同時に得た大量の副作用情報は、厚労省への報告義務を無視していた。社会的倫理の欠如というほかない。
一連の問題は、法規制の緩い医師主導の臨床研究が、製薬会社と医師の癒着の道具に成り下がる危険性を示している。
ディオバンの研究で中核となった5大学への奨学寄付金は、02〜12年の総額で約11億3千万円。一方、ディオバンの売り上げは単年で約1千億円だから、ノバルティスが不正で得た利益はけた違いに大きい。
これに対し薬事法違反の罰金は200万円以下に過ぎない。
不正利得を許さない法制度は何としても必要だろう。米国では近年、製薬会社が30億ドルの和解金を払ったこともある。
医師の不正関与を防ぐには、奨学寄付金など不透明な資金提供をやめ、製薬会社の委託研究として実施するべきだ。
患者が各病院を信頼し研究に協力する以上、信頼を裏切った病院に組織としての責任を問う制度も検討が必要だ。
医療の発展は阻害せず、しかし不正は許さない。そんな仕組みをしっかりつくりたい。

2、リニア中央新幹線、拙速に進めず、国会で論議を(つけは国民に戻ってくる)

リニア中央新幹線の品川―名古屋間の環境影響評価(アセスメント)がほぼ終わった。国土交通相はJR東海の計画を大筋で容認した。JR東海はこの秋にも着工する構えだ。
ただ3年に及んだアセスで、計画への疑問はむしろ膨らんだといわざるをえない。工事で6千万立方メートルを超す残土や汚泥などが出る。沿線河川の水が減ったり、南アルプスの景観や動植物の生息に影響したりする恐れも明らかになった。
こうした環境問題も心配だが、時代の移り変わりを見ると、そもそもリニアは必要なのかとの疑問も抱かせる。
中央新幹線は、1973年に基本計画が決まった。ほどなく高度成長が終わり、同時に計画が示された11路線は凍結状態だ。中央新幹線だけが進んだのは、JR東海が東京―大阪間で9兆円超の建設費を自己負担すると表明したことが大きい。
最高時速500キロ超の超伝導リニアは、62年から研究が続く日本の鉄道技術者の夢だ。何としても実現させ、将来は輸出も、との思いがある。
ただこの40年余りで、社会状況は大きく変わった。最も留意すべきなのは、人口が急速な減少局面に移ったことだ。
JR東海は、東京、名古屋、大阪を1時間程度で結ぶことで、6千万人を超す巨大都市圏がうまれ、日本全体の経済成長を促す、と強調する。
だが、東京一極集中と地方の疲弊が問題になっているのに、3大都市圏の合体化が最適の処方箋なのか。リニア計画を認めた国の審議会でも、社会構造に及ぼす負の側面を十分に検討したとは思えない。
JR東海がもう一つ説くのは、東海道新幹線の代替機能だ。今年で開業50年を迎えて老朽化対策が急務なうえ、リニアがあれば地震の時も東西ルートを確保できるとの考えだ。
ただ、北陸新幹線の整備が進み、東京―敦賀(福井県)間は25年度に開業する予定だ。さらに1本、しかも建設費が割高で電力消費も大きいリニアが唯一の選択なのか。
JR東海が自己負担する9兆円余りは、企業努力の産物ではあるものの、公共交通であるJRに国民が払った運賃が原資となっている。地方公共交通が衰弱している現状で、何ともアンバランスな投資にも思える。
着工にゴーサインを出すのは国だ。安倍政権は前のめりだが、リニア抜きの案も含めた国土利用の未来計画を示して、国民の意思を確かめてはどうか。拙速に進める必要はない。

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