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【14.04.19】 生活保護厳格化を修正する。(4月19日 中日新聞朝刊より)

「生活保護法施行規則の一部を改正する」省令案は、反対の声が多く、行政を動かす。

 厚生労働省は18日、改正生活保護法の実務の指針となる省令案を修正した上で公布した。厚労省が2月末に公表した省令案は、与野党による改正法の修正や政府側の国会答弁が反映されておらず、研究者や弁護士、NPO法人代表などがパブリックコメント(意見公募)に修正を求める意見を寄せるよう呼び掛けていた。集まった意見は1166件に上り、厚労省は国民の声に動かされる形で、省令案を国会答弁や与野党修正に沿う内容に修正した。 (上坂修子)

生活保護問題対策全国会議は「国会答弁に沿った内容に大きく修正されている」と評価

 改正生活保護法の政府原案は申請時に申請書の提出を義務付けたが、与野党で保護の決定までに提出すればよいと解釈できる表現に修正した。だが、厚労省が決めた省令案では政府原案の表現に戻されてしまい、そのまま公布されれば、与野党の修正が無視され、申請時の申請書提出が必要となるところだった。公布された省令は、法案の修正に沿ったものになった。
 自治体が保護を始める時に扶養義務者に書面で通知したり、援助を断る扶養義務者に説明を求める「扶養義務の強化」に関しても、「極めて例外的な場合に限る」との政府答弁に即した内容に直された。省令案は原則として扶養義務を強化する内容になっていた。
 省令案の抜本的な修正を求めていた生活保護問題対策全国会議は「国会答弁に沿った内容に大きく修正されている」と評価するコメントを同日出した。
 厚労省は2月末から3月末までパブコメを実施。寄せられた意見のほとんどが申請手続きの厳格化や扶養義務の強化を懸念し、見直しを求める内容だった。
 パブコメは行政機関が政省令などを決める際、事前に案を示し、国民から意見を求める手続き。2006年度に正式に始まった。
 2009年度実施のパブコメ765項目のうち347項目(45・4%)は意見0。1〜20件が344項目(45%)で、500件以上は10項目(1・3%)にとどまった。136(17・8%)項目で意見が反映されたとしているが、「大幅に修正されたケースはない」(総務省行政手続室)という。
 パブコメに詳しい常岡孝好(つねおかたかよし)学習院大教授(行政法)は「かなり大幅な修正があったので評価できる」とした上で「パブコメに期待されるのは、行政の裁量や政策判断をより望ましい方向に変えること。あまり想定されていなかったが、今回は法律の趣旨に反する案が出された時にも是正することができるという良い例だと思う」と語った。

星野公平の「生活保護法施行規則の一部を改正する省令(案)に対する意見(パブリックコメント)」(再掲)

 昨年末に「改正」された生活保護法は、口頭でも認められている生活保護の申請を文書による申請しか認めなくしたり、親族の扶養義務を強化したりするなど、生活保護を利用しにくくする大改悪です。
 しかし、改悪を許さない多くの声で、厚労省などは「運用は変わらない」と国会で答弁し、参院厚労委員会は、生活保護の申請をさせない「水際作戦」等をやらないように地方自治体に周知徹底することを求める付帯決議をしました。
 しかしながら、厚労省が2月末に公表した省令(案)は、国会での審議や付帯決議で設けられた歯止めとなる内容を骨抜きにするものになっています。
 省令(案)は、文書による申請を大原則にすることを強調し、口頭での申請は、「特別の事情」があると福祉事務所が判断した場合などに限定した「例外」にする方針としました。これは申請を厳格化し、生活保護からしめ出すものです。
 また親族へ扶養が可能かどうかを確認する通知などを原則として行う、ともしています。国会答弁などで厚労省は、扶養についての通知などを親族に送ることは「極めて限定的な場合」としていました。「例外」を「原則」に逆転させたことは、扶養義務の強化です。
 省令(案)どおりに改悪法が運用されれば、よほどの特別な事情が無い限り口頭申請は受け付けられなくなったり、親族に扶養要請通知がいくことを恐れて生活保護を申請することをためらったりする人が続出しかねません。
 これは、国民の生存権にかかわる大きな問題で、国会審議の到達点にも反する省令(案)を決めることは許されません。
 今回の省令(案)は、国民の生存権を保障した憲法25条の理念にも反します。「最後のセーフティネット」である生活保護制度を国民の立場で守って下さい。

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