活動日誌−活動日誌
【17.10.18】 中山論文（前衛２０１７年１０月号）の要約
人口減少を口実とした大型開発の復活（関係する桑名市職員に読むことを進める）
人口減少を口実とした大型開発の復活
―アベノミクスの下で動き出した開発自治体の動向と自治体の課題
奈良女子大学教授 中山 徹 （前衛２０１７年１０月号Ｎｏ．９５３）
アベノミクスの下で地域がどう再編されようとしているのか
１、 アベノミクスによる国土の再編
・東京一極集中はアベノミクスの根幹
・地方再編の方向性と地方創生
ハード面ではコンパクト、ソフト面では連携
コンパクト(立地適正化)：人口減少に対応し、市街地を縮小し、人口が減少しても効率性が低
下しないようにする
連携(連携中枢都市圏、定住自立圏)：複数の自治体が共同し、効率的な施策の展開を図る
地方創生の全体的な位置付けは、東京一極集中と表裏一体の関係にある地方の再編である
２、 自治体の開発願望に応える仕組み
・自治体がコンパクトで重視しているのは中心拠点の設定
自治体の重点は都市機能誘導区域にある（都市拠点と地域/生活拠点）
・中心拠点を重視する理由
さまざまな支援措置
・公共施設等総合管理計画は統廃合と複合施設整備が重点
統廃合 市民向け予算の削減
複合施設化 公共事業最適化事業債を用意
・自治体の開発願望に応えた地方の再編
立地適正化と公共施設の複合化
３、 開発型自治体の特徴と行く末
・開発型自治体の考え方
開発計画 立地適正化、公共施設等総合管理計画、新幹線・リニア新駅周辺開発、ＭＩＣＥ計
画など
なぜ、「人口減少→大規模開発」という奇妙な事が生じているのか
「人口減少→消費の低迷→大型開発→消費者の呼び込み→消費の拡大」という夢
公共施設の場合「人口減少→財政状況の悪化→公共施設面積の削減→公共施設の建替・複合化」
・過大な人口減少予測で開発に拍車
市町村は「人口ビジョン」、「総合戦略」をつくった（国の長期ビジョンにより）
可笑しな事 市町村は自分で作った「人口ビジョン」よりも減少率の高い社人研のものを使っ
て、大規模開発や公共施設の複合化を進めようとしている
・開発は成功するのか
事業の成立は、周辺から消費を奪ったことを意味する（カジノ）
・財源は市民サービスの削減
１９９０年代は「起債→開発→財政危機→市民向け予算の削減」
今回は「市民向け予算の削減→開発」開発を進める前から市民向け予算の削減が起こる。公共
施設の統廃合を進めるために、直接、市民生活に悪影響が出る
・大規模開発の行き着く先、自治体消滅
１９９０年代と違った影響
�� 開発の大半はうまく進まず、地域経済は活性化されない
�� 市民向け予算の削減で、市民生活が確実に悪化する
人口減少を大規模開発で乗り切ろうとすると、想定以上の人口減少を引き起こし、自治体消滅を現実のものとしかねない
４、 人口減少時代における国土のあり方
・国際化≠首都圏への集中
・なぜ東京一極集中が進むのか
人口が減ると大規模開発は減る
全国的に人口が減る中で、開発投資先を確保する政策を進めている事が東京一極集中を生み出
している最大の原因
・東京一極集中を永遠に続けるつもりか
「人口減少→開発投資先の確保→東京一極集中→人口減少」
・省庁の移転、私立大学の入学定員抑制では本質的な解決にならない
地方で子どもの減少に伴った小中学校や保育所、幼稚園を廃統合すると、地方では子育てがま
すます困難になる。地方は就労先が見つけにくく、子育てもしにくいとなれば、若者たちの東
京一極集中はますます進む
・地方での雇用拡大、東京での規制強化を進めるべき
首都圏での集中的に行っているインフラ整備、国家戦略特区等の規制緩和、これらを止めれば
東京一極集中は大きく改善に向かう。古野財源を地方での雇用創出に向けるべき。（第一次産
業、再生可能エネルギ―、観光、医療・福祉・教育）
地方での安定した雇用の創出は出生率の回復と望ましい循環を作り出す
５、 市民共同自治体への展望
・自治体の三類型と展望
開発型自治体（人口減少の諸問題を大規模開発によって解決しようとす）
市民共同自治体（市民と協力し合いながら地域の振興を図ろうとする）
保留型自治体（方向を決めかねている）
・まちづくりの課題
�� 防災等の例外を除き、大規模開発は不要。
�� いわゆるコンパクトな市街地形成は不要。（東京一極集中の是正と出生率の向上を進める）
�� 生活圏の整備を最優先する。
・おわりに
保革を越えた市民の共同で新たな自治体建設。地域と国を変え、人口減少を乗り越える。
