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【17.05.24】 日経新聞は「なお残る『共謀罪』法案の懸念」と社説で解説

議論のなかで必要があれば、処罰範囲の明確化や対象犯罪のさらなる削減など、条文の見直しをためらうべきではない。国会のあり方が問われている。

組織犯罪処罰法の改正案が、与党などの賛成多数により衆院本会議で可決された。テロや組織犯罪を実行前の計画段階で罰するため、「共謀罪」の構成要件を改めたテロ等準備罪を新設するというのが大きな目的だ。
この法案をめぐっては、「処罰の対象が不明確で、恣意的に運用されかねない」「思想や内心の自由を侵す」といった懸念がかねて指摘されている。衆院での審議でもこうした点はなお解消されておらず、国民が法案を理解しているとは言えないのが現状だろう。
そのような法案が、先立つ衆院法務委員会に続き、本会議でも与党側が押し切る形で採決されたことは残念だ。参院では、政府・与党は法案の成立をいたずらに急ぐのではなく、十分に時間をかけて繰り返し丁寧に説明を尽くす必要がある。
「共謀罪」は国際組織犯罪防止条約を締結するための前提として、各国に整備が義務付けられている。組織犯罪の封じ込めは国際社会の大きな課題であり、条約を締結する意義や、そのためにテロ等準備罪を導入する必要性自体は理解できる。
だがこれまでの衆院の審議では、政府側の答弁は一貫性を欠いたり、根拠があいまいなままに強弁したりといった場面が目立った。野党側の追及が理念的だったこともあり、議論がかみ合わないやり取りも多かった。
それでも議論を積み重ねることで、疑問点や課題は徐々に集約されつつある。仮に法案が成立した際には、国会での審議が運用面での大きな指針や歯止めにつながることも忘れてはならない。
政府・与党には、「想定時間に達したから採決する」という態度ではなく、改めて反対の立場の意見を真摯に聞き、受け止めていく姿勢が求められる。

戦前の悪法を思わせる 「共謀罪」衆院通過 中日社説

「共謀罪」法案が衆院を通過した。安倍政権で繰り返される数の力による横暴だ。戦前の治安維持法のような悪法にならないか心配だ。
警察「自然に手を入れる行為自体に反対する人物であることをご存じか」
電力会社子会社「以前、ゴルフ場建設時にも反対派として活動された」
警察「自然破壊につながることに敏感に反対する人物もいるが、ご存じか。東大を中退しており、頭もいい。しゃべりも上手であるから、やっかいになる」
監視は通常業務です
岐阜県大垣市での風力発電事業計画をめぐって、岐阜県警が反対派住民を監視し、収集した情報を電力会社子会社に提供していた。2014年に発覚した。
「やっかい」と警察に名指しされた人は、地元で護憲や反原発を訴えてもいる。ただ、ゴルフ場の反対運動は30年も前のことだった。つまりは市民運動というだけで警察は、なぜだか監視対象にしていたわけだ。この問題は、国会でも取り上げられたが、警察庁警備局長はこう述べた。
「公共の安全と秩序の維持という責務を果たす上で、通常行っている警察業務の一環」−。いつもやっている業務というのだ。
公安調査庁の1996年度の内部文書が明らかになったこともある。どんな団体を調査し、実態把握していたか。原発政策に批判的な団体。大気汚染やリゾート開発、ごみ問題などの課題に取り組む環境団体。女性の地位向上や消費税引き上げ反対運動などの団体も含まれていた。
日本消費者連盟。いじめ・不登校問題の団体。市民オンブズマン、死刑廃止や人権擁護の団体。言論・出版の自由を求めるマスコミ系団体だ。具体的には日本ペンクラブや日本ジャーナリスト会議が対象として列挙してあった。
監視国家がやって来る
警察や公安調査庁は常態的にこんな調査を行っているのだから、表に出たのは氷山の一角にすぎないのだろう。「共謀罪」の審議の中で繰り返し、政府は「一般人は対象にならない」と述べていた。それなのに、現実にはさまざまな市民団体に対しては、既に警察などの調査対象になり、実態把握されている。
監視同然ではないか。なぜ環境団体や人権団体などのメンバーが監視対象にならねばならないのか。「共謀罪」は組織的犯罪集団が対象になるというが、むしろ今までの捜査当局の監視活動にお墨付きを与える結果となろう。
国連の特別報告者から共謀罪法案に「プライバシーや表現の自由の制限につながる。恣意的運用の恐れがある」と首相に書簡が送られた。共謀罪は犯罪の実行前に捕まえるから、当然、冤罪が起きる。政府はこれらの問題を軽く考えてはいないか。恐るべき人権侵害を引き起こしかねない。
1925年にできた治安維持法は国体の変革、私有財産制を否認する目的の結社を防ぐための法律だった。つまり共産党弾圧のためにつくられた。当初はだれも自分には関係のない法律だと思っていたらしい。
ところが法改正され、共産党の活動を支えるあらゆる行為を罰することができるようになった。そして、反戦思想、反政府思想、宗教団体まで幅広く拘束していった。しかも、起訴されるのは少数派。拷問などが横行し、思想弾圧そのものが自己目的化していったのだ。
共謀罪も今は自分には関係がないと思う人がほとんどだろう。だが、今後、法改正など事態が変わることはありうる。一般人、一般の団体なども対象にならないと誰が保証できようか。国会審議でも団体の性質が一変すれば一般人も対象になるとしている。何せ既に警察は一般団体を日常的に調査対象にしているのだ。
少なくとも「内心の自由」に官憲が手を突っ込んだ点は共謀罪も治安維持法も同じであろう。
捜査手法も大きく変わる。共謀となる話し合いの場をまずつかむ。現金を下ろすなど準備行為の場もつかむ。そんな場面をつかむには、捜査当局は徹底的に監視を強めるに違いない。政府は「テロ対策」と言い続けたが、それは口実であって、内実は国内の監視の根拠を与えたに等しい。
「デモはテロ」なのか
何よりも心配するのが反政府活動などが捜査当局の標的になることだ。「絶叫デモはテロ行為と変わらない」とブログで書いた自民党の大物議員がいた。そのような考え方に基づけば、反政府の立場で発言する団体はテロ組織同然だということになる。共謀罪の対象にもなろう。そんな運用がなされれば、思想の自由・表現の自由は息の根を止められる。

テロ準備罪法案 普通の国民は監視の対象外だ(誰が信じるだろうか) 読売社説

各国との捜査共助なしに、国際テロ集団の凶行は防げない。
国内法を今国会で確実に成立させて、国際組織犯罪防止条約を締結し、2020年東京五輪を万全の体制で迎えたい。
テロ等準備罪の創設を柱とした組織犯罪処罰法改正案が衆院本会議で、自民、公明両党と日本維新の会などの賛成多数で可決され、参院に送付された。
民進、共産両党などは「強行採決だ」と反発したが、衆院の審議は、重要法案の目安とされる30時間に達している。与党が「論点は出尽くした」として、採決に踏み切ったのはうなずける。
採決に先立ち、自民、公明両党と維新は、政府案の修正で合意した。テロ等準備罪の取り調べに可視化を義務化するかどうか、検討することを付則に盛り込んだ。
取り調べを録音・録画すると、容疑者が報復を恐れ、口をつぐむ懸念もあるだろう。可視化の実施には慎重な検討が必要だが、より多くの党の賛同を得られた点については、評価したい。
衆院の審議で、野党は不安を煽(あお)るような質問を続けた。
政府が「一般人は100%捜査対象にならない」と説明しているにもかかわらず、民進党などは、捜査しなければ、一般人もテロ等準備罪の疑いがあるかどうかはっきりしない、と繰り返した。
普通の国民も監視対象になる、と印象づけるのが狙いだろう。
刑事訴訟法上、捜査は犯罪の嫌疑が存在して、初めて着手される。テロ等準備罪に関わる犯罪の主体は、組織的犯罪集団に限られる。集団と無関係の人に嫌疑は生じず、当然、捜査対象にはなり得ない。批判は当たるまい。
野党は277の対象犯罪についても「多すぎる」と主張する。
政府は「組織的犯罪集団が現実的に行う可能性がある犯罪だ」として、適正に対象犯罪を選定していると強調した。
著作権法違反関連では、「組織的犯罪集団による海賊版CD販売などが考えられる」との見解を明らかにした。「墳墓発掘死体損壊等罪」をテロ等準備罪に含めているのは、海外でテロ集団による墳墓破壊が実際に起きたためだ。
政府は、参院でも具体例を示して、法案の必要性を丁寧に説明し、国民の理解を深めることに注力してもらいたい。
テロ対策は焦眉の急である。必要なら、7月2日の東京都議選をまたいだ会期延長もためらわずに、成立を図るべきだ。

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