活動日誌−活動日誌

【16.10.24】 リニア中央新幹線(主張と国会での論議)

リニア財投3兆円 精査もない優遇 無責任過ぎる

リニア中央新幹線の建設加速のために公的資金を投入する方針を決めた安倍政権の異常な前のめり姿勢が、国会審議のなかで浮き彫りになっています。財政投融資の仕組みを通じ政府が建設主体のJR東海に3兆円もの公費を低利で貸し付けるというのに、リニアの採算性や貸し付けの償還確実性がまともに検証されていない実態も明らかになり、安倍政権の無責任ぶりに批判が上がっています。首相は「巨大な経済圏をつくり、日本経済を成長させる」などとバラ色の幻想をふりまきますが、このままでは日本の未来に“悪夢”をもたらしかねません。
リニア中央新幹線についてJR東海の当初計画は、2027年に東京(品川)―名古屋で開業させ、45年に大阪まで延伸させるというものでした。これに対し大阪延伸早期実現を求める声が財界などから上がり、安倍政権は8月に閣議決定した経済対策でJR東海に3兆円の公的資金を融資するテコ入れを通じて、大阪延伸を当初より8年前倒しさせることを決め、関連法案を国会に提出しています。
東京―大阪で見込まれる総工費約9兆円は全てJR東海が自力で資金を賄う予定でした。ただ同社の財務だけに任せると、名古屋までの工費約5兆5千億円の債務返済などにあてる8年間の「経営体力回復期間」を設ける必要があるため延伸の早期着工はできません。そこで、財政投融資によって民間銀行よりはるかに低い金利の資金を融資することで、「体力回復期間」をなくし直ちに大阪延伸工事に入れるようにしようというのです。政府が借り集めた資金を長期に低金利で固定して貸し付けるという、極めて破格の優遇策です。
重大なのは総工費9兆円の3分の1にあたる3兆円の巨額融資を行うのに、安倍政権がリニア計画の採算性や融資の償還可能性などを精査していないことです。そのことは日本共産党議員の衆参両院での質問で次々と明らかになりました。財務省の審議会は、普段は行う意見聴取もせず持ち回り会議で融資方針を決めました。需要予測も生産年齢人口の減少を加味していないことを政府は認めました。過去の新幹線建設では事業費が当初見込みより膨れ上がったケースが続出したのに、リニアは積算根拠すら不明瞭のままです。
JR東海社長も「ペイしない」といったように、リニア単独では赤字必至の事業です。想定外の難工事や事故で経営難に陥れば融資返済ができず、ツケは国民に回されます。麻生太郎財務相は返済の見込みを追及され「それまで生きている保証はないから、分かりません」と開き直りました。こんな無責任な姿勢は許されません。
南アルプスに大穴を開ける自然破壊、長大トンネル工事で排出される膨大な残土問題、活断層を横切ることの危険性などリニア計画自体に沿線住民の不安と批判が広がっています。認可取り消しを求める訴訟も始まっています。
自然と生活環境、国土を荒廃させる危険だけでなく、国民の将来に巨額の借金を負わせかねない危険まで強まってきたリニア計画をこのまま推進させることは未来に重大な禍根を残します。国会で徹底検証し、安倍政権に支援と計画を中止させることが必要です。

1、 財政投融資 JR東海への経営支援(清水議員)

リニア建設より、安全対策や在来線の維持管理を優先させるべきだ
日本共産党の清水忠史議員は19日の衆院国土交通委員会で、リニア新幹線への財政投融資(財投)はJR東海への経営支援であり、同社による「全額自己負担」の前提が崩れると追及しました。
清水氏は、なぜ財投によって全線開業が最大8年前倒しできるのかも追及。国交省の奥田哲也鉄道局長は「JR東海が金利変動リスクや資金調達リスクを回避することができる」と答えました。
清水氏は、JR東海が、“安定配当を維持しつつ、長期固定低利の財投によって経営リスクを低減できる”としていることを示し、「財投はJR東海への経営支援だ」と指摘。「『全額自己負担』としていた事業認可の前提が崩れる」と批判しました。
清水氏は「最大8年前倒し」に保証があるのかも追及。奥田氏は「工期延長の可能性がないとはいえない」と、努力目標にすぎないことを認めました。
清水氏は、リニア新幹線の効果とされている「人口7千万人の巨大都市圏スーパー・メガリージョン形成」を疑問視。2065年の推計人口8100万人(国立社会保障・人口問題研究所)に対し、三大都市圏に7千万人を維持するなら「いびつな国土となり、地方創生どころか地方消滅だ」と批判。一方で、JR東海の在来線にホームドア設置駅がないことなどを挙げ、「リニア建設より、安全対策や在来線の維持管理を優先させるべきだ」と強調しました。

2、 大深度地下使用認可 地権者権利 侵害の恐れ(本村議員)

リニアが通る土地は、消費者にとって不利益になる
日本共産党の本村伸子議員は19日の衆院国土交通委員会で、リニア新幹線建設に関連して大深度地下(深さ40メートル以上の地中)使用認可の問題を取り上げ、土地利用が制限され地権者の権利を侵害する危険性を追及しました。
大深度地下使用の認可は大深度地下法に基づき、事業者が地権者の同意なしに地下を使用できるようになるもの。本村氏は、初めて本格的に大深度地下法が適用される東京外環道で「土地利用に制限を課すこともない」としていたにもかかわらず、突然、都市計画事業を認可し、建築制限など権利侵害された事例を紹介。住民からは「だまされた」と声が上がっているとして、大深度地下使用認可と都市計画事業認可の取り消しを求めました。
リニア建設では、東京都品川、世田谷、大田各区・町田市、川崎市、名古屋市・愛知県春日井市の計55キロメートルが大深度地下使用認可の対象。本村氏は、リニア建設で「都市計画事業を適用することはないのか」と迫りました。石井啓一国交相は「現時点で予定はない」と述べ、今後の可能性は否定しませんでした。栗田卓也都市局長は、大深度地下使用の認可のみの場合、土地利用が制限される可能性は「皆無ではない」と答弁。本村氏は「大深度地下法は地権者の権利を侵害するもので適用すべきでない」と主張しました。
本村氏が、大深度地下にリニアが通る土地を取り引きする際、宅地建物取引業法の重要説明事項に当たるかただすと、谷脇暁土地・建設産業局長は「対象とされていない」と答弁。本村氏は「消費者にとって不利益になる」と批判しました。

3、 経済効果 試算も根拠もない (島津議員)

「地方創生回廊」
日本共産党の島津幸広議員は19日の衆院内閣委員会で、政府は「地方創生回廊」の名のもとでリニア中央新幹線に3兆円の財政投融資を行い全線開業を前倒しするとしているが、それで政府のいう「成長の果実が津々浦々にいきわたる」のかは大いに疑問だと批判しました。
島津氏が「地方創生回廊」による日本経済の効果の試算を問うと、石原伸晃経済再生相は「マクロ経済の分析はまだ行われていない」と答弁。島津氏は「試算もない、根拠もない、スローガンだけ。大変無責任だ」「“未来への投資”だというが“未来への浪費”だ」と批判し、地方が特性を生かして自立することで経済の好循環を生み出す、地に足のついた経済対策への転換を求めました。

4、リニア 相当な環境負荷生じる 大臣の認識問う (武田議員)

日本共産党の武田良介議員は参院環境委員会で初質問に立ち、リニア新幹線建設の環境への影響についてただし「問題山積のリニア建設はきっぱりやめるべきだ」と求めました。
武田氏は、リニア建設の環境影響評価(アセス)に付された「(環境影響を最大限回避・低減しても)なお、相当な環境負荷が生じる」との「環境大臣意見」の認識に変わりがないか確認。山本公一環境相は「当然のごとく踏襲していく」と答えました。
武田氏は、南アルプスを貫通するトンネル工事が着手間近と報じられている長野県大鹿村の実態を取り上げました。残土置き場にもなっている同村では、1961年に40人が亡くなる大規模土砂災害「三六災害」(災害全体では99人が死亡)が発生しています。
武田氏は、リニア工事では前代未聞の量の残土が発生するとして「過去に大規模災害が起きたと分かっている地域に残土を置き、災害が起きたらどうするのか」と追及。山本環境相は「一般論で言えば憂慮すべきことだ」と述べました。
武田氏は、JR東海の姿勢も問題視。大鹿村住民の「JR東海は、住民の理解が進んでいるかは自分たちが判断すると言っている」「(住民説明会後に)一層理解と同意が遠くなった」などの不満の声を紹介。「環境大臣意見」にも、関係自治体・住民の「理解なしに(リニア事業を)実施することは不可能」とあることを示し「住民が理解・合意している状況ではない。大臣意見の立場に立って工事はやめるべきだと明言すべきだ」と求めました。
長野市から傍聴に来た女性(69)は「県民の思いを代弁してくれた。議員を送り出して良かった」と笑顔でした。

【参考】 産経も【主張】で、地方創生回廊 まず生活の足を確保せよ

国土の大型開発に乗り出すとでもいうのだろうか。安倍晋三首相が施政方針演説で掲げた、新幹線や高速道路などの交通網を整備する「地方創生回廊」構想のことだ。
「大阪や東京が大きなハブとなって、地方と地方をつないでいく」という説明は、田中角栄元首相による「日本列島改造論」を想起させる。
今後、人口の激減期を迎える日本では、既存の鉄道でさえ存続の危機を指摘される路線が少なくない。大交通網の整備を「時代の要請」と呼ぶことには、大きな違和感を覚えざるを得ない。
整備新幹線や高速道路の延伸に対する地方の期待は今も大きく、自らの政治実績にしたいと考える首長や地方議員は少なくない。
だが、交通網整備がかえって東京一極集中を加速しかねない面にも目を向けたい。首相はこの構想で「全国を一つの経済圏に統合する」とも語ったが、地方創生や地方分権との整合性はあるか。
人口減少に対応する社会づくりが現に求められており、コンパクトシティーをはじめ、戦略的に「どう縮むか」が問われている。必要な交通インフラは整備するとしても、まずは既存路線の有効活用こそ考えるべきだろう。

▲ このページの先頭にもどる

トップページに戻る
以前の活動日誌はこちらからご覧いただけます
RSSフィード(更新情報)