活動日誌−活動日誌
【16.10.04】 ９月議会終わる。
請願第７号「『小中一貫教育の導入』について、審議のやり直しを求める請願」のちょっと長い賛成討論。
請願第７号「『小中一貫教育の導入』について、審議のやり直しを求める請願」は、先月２３日の委員会審査の結果、委員会では不採択となりました。
反対意見の中にも「説明不足、周知不足には同意する。」「やり直しではなく、慎重審議はやってほしいと思う。」「納得する部分もあるが、今後の審議をもっと慎重にやってほしいという事ならいいと思う。」等々がありました。
もっと、「学校教育あり方検討委員会」の運営の仕方・内容を精査し、「小中一貫教育」について真摯に議論して欲しいと思いました。
「小中一貫教育」と「学校教育あり方検討委員会」の２点について問題点を指摘し、議員各位にご賛同を呼びかけますと共に、市の教育関係部局と教育委員会事務局に訴えさせていただきます。
１、まず、「小中一貫教育」の問題点です。
桑名市になじむのか。住民等への説明はどうなっているのか。（いっさい説明されていません。）小学校の統廃合の道具にされていないか。「小中一貫教育」について述べます。
皆さんご存知のように、今年（２０１６年）の４月より小中一貫の「義務教育学校」が法制化されました。「義務教育学校」は、９年間の教育目標を明確化し、９年間一貫した教育課程の編成・実施が要件になっています。小中一貫の「義務教育学校」は、１人の校長の下、一つの教職員集団からなり、同一敷地内にある施設一体型と、小学校と中学校が離れた場所にある分離型、隣接する併設型があるようです。
小中一貫教育を導入すると宣言し、とりあえず「独自」の小中一貫教育課程を作成すれば、この制度が導入できます。このため、一部の統廃合したい学校を施設一体型の「義務教育学校」にし、周辺の学校は分離型「一貫校」もしくは「小中一貫型小学校・中学校」として位置付けていく自治体が続出する事が予想されています。
法改正により、自治体が参入するハードルが、かなり下げられました。小中一貫教育を導入するか、しないかは自治体の任意とされています。小中一貫教育を導入する場合、その他の教育の質の向上をどう図るかが課題とされ、小中一貫教育はあたかも質の高い教育であるかのように幻想されています。
ところで、法律が成立してから、導入があちこちで検討されていますが、小中一貫教育の「教育的効果」は検証されていません。
朝日新聞の調査では、一貫校で成果があったという意見の中の、自由記述では、「小中教師の連携がよくなった」という程度だそうです。逆に、課題として、６、７年生が１番の課題、７年生の対応に教職員・児童も戸惑い、小６がリーダーの役割を発揮できない、成長の切れ目の小中の切れ目がうまく機能しない、などがあげられています。
導入の理由によくあげられている「中１ギャップ」については、文部科学省、国立教育政策研究所の発行している「生徒指導リーフ」（パンフレット）では「中１ギャップの真実」（２０１４年）が報告されています。
「中１ギャップ」には、科学的根拠はありません。「『中１ギャップ』に限らず、便利な用語を安易に用いることで思考を停止し、根拠を確認しないままの議論を進めたり広めたりしてはならない」と結論付け、忠告しています。
【教育長、教育部長、読まれましたか。】
小中一貫教育の歴史をたどってみますと、小中一貫校は、２０００年に広島県呉市で文科省の研究開発学校制度を用いて始まりました。（これは財政危機が問題だった様です。）
２００３−２００４年、東京都品川区、京都市、奈良市で、教育内容を規制緩和した教育特区として取り入れるようになりました。
ところが、２０１０年前後から教職員や住民による反対運動が起こりだしました。反対意見は、小学校からエリート校になる、統廃合を推進するが問題視しされたようです。
そして、２０１４年に総務省は「公共施設適正配置総合計画」で学校の統廃合を進め、小中一貫化を促しています。
２０１５年には「統廃合の手引き」で、通学距離小学校４キロ、中学校６キロ以内にスクールバスなどを利用した通学時間概ね「１時間以内」が追加されました。
現在、小中一貫校の導入で多くの紛争が起きているのは大阪府下の自治体で池田市、門真市、和泉市などです。後程これらの市の状況を述べさせてもらいます。
（主に山本論文から）
別の角度、子どもたちの発達心理から見てみます。
小学生から中学生にかけて、世界との向き合い方が変わってきます。小学校の低学年は、自分の目の前にある世界にとらわれがちです。年齢を重ねると、少しずつそこから解き放たれていくようです。小学生と中学生には固有の発達的な課題があります。小学生には小学生で獲得すべきことがあり、中学生には中学生で獲得すべきことがあります。それを混同しないことが重要だと言われています。
「小中一貫教育の総合的研究」チームによる横断的調査結果によると、小中一貫校の小学生（４−６年生）は、非一貫校の小学生と比較して、自信がなく、自己価値を感じず、友人関係にも恵まれなかった。また、疲労を強く感じている事などを明らかにしています。
縦断的調査の必要性もこれからの課題です。小中一貫校において、子どもたちがどのように成長・発達しているのか。その具体的な様子を、学校規模や歴史、教育内容・カリキュラムなどの要因を押さえつつ、明らかにしていくことが重要であります。 （主に都筑論文から）
「小中一貫教育」は現在このような状況であり、具体例として３件程報告します。
�� 大阪府池田市からの報告
反対運動がなかったら、教職員はおろか、地域住民や保護者、子供の声を聞くことなく、行政サイドだけの、強引な開校になっていただろう。小学校区ごとに教育懇談会を実施した。教育委員会が、バラ色の小中一貫校のイメージを広げてしまってからでは、反対運動をするのは難しくなる。イメージをどっちが先に取るかが勝負。小中一貫校は、安上がりどころか、かえって金がかかる事が明らかになってきている。
１つ屋根の下で小・中学生が暮らすのは「こんなにも大変な事かと実感している」と述べられています。小学校と中学校の違いを曖昧にするという事は、お互いの学校文化を貧困なものにします。
学校統廃合、教育の合理化、学校教育の複線化等の文脈で語られる事の多い小中一貫校であるが、問題はそれだけではない。教育実践の自由を狭め、小中の学校文化を破壊し、教育内容への介入の危険を招くというのが、事の本質ではないか。とも指摘しています。 （美濃辺論文より、教職員組合）
�� 大阪府和泉市からの報告
和泉市の子どもと教育を守る会を発足。開校の教育的根拠が極めて乏しく、学校の統廃合など財政効率優先の安上がりの教育と言う本質がみえている。
ＷＨＯ（世界保健機構）は、小さな学校、小さなクラスは世界の流れであり、１００人以上を上回らない学校規模を勧告しています。一度調べてみたいと思っています。 （片上論文より、教職員組合）
�� 京都市からの報告
京都では、「京都方式」と言われる「仕組まれた住民合意」で進められています。統廃合が進められる背景には無秩序なマンション建設などの「まちこわし」があった。「学校統廃合を考える会」を発足させた。多様な経緯と背景を持って学校リストラとリンクした小中一貫校が市・内府内で建設されている。
桑名の「検討会」が視察した「黄檗学園」は、既存の小学校に卒業生を順次受け入れる積み上げ方式で２０１４年度全学年がそろったそうです。統廃合なしで４−３−２制で行われているようです。 （大平論文より、元教職員組合、大学講師）
本当に小中一貫校桑名市になじむのでしょうか。桑名の教育とは何なんでしょうか。
皆さんとともに考えて行きたいと思います。
２、次に、２点目の「学校教育あり方検討委員会」の問題点です。
運営上に問題がある。教育委員会事務局（教育長）の筋書き通りに進められている。どうして、中間報告案を事務局が作っているのか。
「学校教育あり方検討委員会」の経緯は、請願書にあるように、
第１回は、桑名の現状の説明と諮問でありました。
諮問内容は、「望ましい学校教育のあり方について」であり、諮問事項は、
（１）桑名市における小中一貫教育について
（２）小規模校への対応について
（３）中学校区を基本とした地域毎の学校施設の具体的な形態について
の３点です。何処にも小中一貫教育導入の文言はありません。
第２回は、多度の小規模校視察とアンケート（今後の学校教育のあり方について考え等を調査するもの）の内容・中味の決定でした。
第３回は、宇治市の宇治黄檗学園の視察だけでした。先程言った通りですが、都合のいい１校だけの訪問で参考になるのでしょうか。
第４回では、数年にわたって研究されてきた小中連携の内容の質問があり、次回に資料が提出される事になりました。又、７月に実施されたアンケートについては報告されていない様で、このような状況で「小中一貫教育の導入」が決定されました。
「小中一貫教育」について、ほとんど議論も検証もされていません。
そして、第５回では、もう「中間とりまとめ」が行われました。
初めて、アンケートの速報値と「小中学校総合連携推進事業」（小中連携）の報告（事業目的、概要、成果と課題）が資料提供されました。詳細は論議されていません。
「中間とりまとめ」は、諮問事項の「（３）中学校区を基本とした地域毎の学校施設の具体的な形態について」を検討していくに当たり、諮問事項の（１）桑名市における小中一貫教育について（２）小規模校への対応についての基本的な方向性をまとめたものです。中間報告案は事務局が作って、検討委員会に報告している様でした。
以上の様に会議の運営は小学校の児童会以下で、教育委員会事務局主導で行われています。私は、この様な「学校教育あり方検討委員会」に、将来の桑名の教育の骨格となってしまう事（小中一貫教育の導入や学校の統廃合）を任されない思いからこの請願に賛成するものです。
以上が請願に対する賛成の討論です。改めて議員各位の賢明なるご判断を求めます。
