活動日誌−活動日誌

【16.02.17】 発言の波紋(昨日の朝日と中日の社説でも言及)

朝日 丸川環境相 撤回しても残る「軽さ」、島尻沖縄北方相・安倍首相も

福島第一原発事故への対応で、担当閣僚である丸川環境相の発言が波紋を広げている。
国が追加被曝線量の長期目標として示した年間1ミリシーベルトについて、7日の講演で「『反放射能派』と言うと変ですが、どれだけ下げても心配だという人は世の中にいる。そういう人たちが騒いだ中で、何の科学的根拠もなく時の環境大臣が決めた」などと発言した。翌日の信濃毎日新聞が報じた。
放射性物質の除染や、追加被曝の抑制などは、安倍内閣の最重要課題の一つである。
原発事故からまもなく5年。除染だけでは長期目標の達成が難しい地域がまだ残り、住民の帰還が進まない現状がある。
長期目標は、国際放射線防護委員会が原発事故から復旧する際の参考値とする「年1〜20ミリシーベルト」の最も厳しい水準だ。1ミリシーベルトに決まった背景には、安全や安心を求める地元福島の要望もあった。
一日も早い帰還を願う住民の思いと、長期目標をどう整合させるか。さまざまな複雑な要素を考慮して決められ、いまなお試行錯誤が続く難題である。
丸川氏がそうした経緯を知らなかったとすれば、不勉強と言われても仕方がない。それとも、経緯を知ったうえで、決定当時の民主党政権をおとしめるための発言だったのか。
さらに深刻なのは発言が報じられて以降の二転三転ぶりだ。
国会質問や取材に「こういう言い回しをした記憶は持っていない」などと答え続け、一転して「言ったと思う」と認めたのは12日朝、発言を撤回したのはその日夕方になってからだ。
本当に発言内容を忘れたのか。記憶がないと言っていれば、いずれ国民が忘れてくれると思ったのか。いずれにせよ、閣僚としての適格性が疑われる発言というほかない。
丸川氏だけではない。安倍内閣の言動の「軽さ」を印象づける場面は他にもある。
島尻沖縄北方相は記者会見で、北方領土の一部である歯舞群島の「歯舞」を読めず、秘書官に問う場面があった。
安倍首相も、自民党のインターネット番組で、2014年に北朝鮮が拉致被害者らの再調査を約束した「ストックホルム合意」を、中東和平の「オスロ合意」と間違えた。
確かに、言い間違いや思い違いは誰にでもある。ただ、原発事故対応や北方領土、拉致問題はいずれも安倍内閣が重要課題に掲げるテーマだ。閣僚の資質とともに、内閣としての姿勢が問われかねない。

中日 「電波停止」発言 放送はだれのものか

放送局に「電波停止」を命じる可能性に言及した高市早苗総務相の発言が波紋を広げている。政権の“脅し”とも受け取れるからだ。放送とは国民のものであるという原点に戻り考えるべきだろう。
問題の発言が飛び出したのは、8日の衆院予算委員会だった。「放送事業者が自律的に放送法を守ることが基本だ」としたうえで、高市氏は「放送事業者が極端なことをして、行政指導しても全く改善しない場合、何の対応もしないとは約束できない」と答えた。
放送局に電波停止命令を出す可能性について問われたときも「将来にわたり全くないとは言えない」と述べた。
確かに電波法76条では、総務相は一定期間の電波停止命令ができると定めている。テロ参加を呼びかける放送など極端な場合だと高市氏は説明している。
だが、問題となっている放送法とは、同法4条のことだ。「政治的に公平であること」「報道は事実をまげないですること」などを規定している。
政治的公平性とは、立場によっていかなる解釈をもとることができる。ある人から見れば、公平であっても、意見の異なる人から見れば、偏向していると映る。およそ判定のつかない、極めて抽象的な概念である。
だから、この4条の規定は、放送事業者が自らの放送倫理、良心に基づいて自律的に守るべき倫理規定だというのが、一般的な考え方だ。そもそも放送法の目的は「放送による表現の自由を確保すること」にあるのだ。民主主義の基礎である。
戦前・戦中は政府の検閲があり、放送は自由ではなかった。逆に政府や軍部の宣伝機関として利用されてきた歴史がある。戦後の放送法制定時には、その反省に立って、「放送による表現の自由」をうたったのである。
もし、4条が倫理規定でなく、担当大臣が放送をチェックする根拠法ならば、放送内容が公平なのかどうかを権力側が判断することになってしまう。自由な放送どころか、権力側が放送局を縛る結果となるわけだ。
高市氏の発言が、放送局の現場を萎縮させないか心配だ。「電波停止」という、放送事業者にとって致命的な手段をちらつかせるのは、厳に慎むべきだ。国民に必要な十分な情報と知識を与えるためにも、放送局は毅然とした姿勢を保ち続けてほしい。

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