活動日誌−活動日誌
【16.02.14】 桑名の介護保険事業（保障）、何が問題なのか。
村瀬博（三重短期大学非常勤講師）住民と自治２０１５年１２月号（Ｐ２４−２７）から
昨年（２０１５年）４月、介護保険法が「改悪」されて、「�� 要支援１と２の人は介護保険から市町村の事業に移る。�� 利用者の負担が、年収等により１割から２割に。�� 特別養護老人ホームの入居条件が要介護３以上に。等々」となった。
そして、本来なら国・自治体が果たすべき公的責任を後退させ、自助・共助（自己責任論も含む）を基本にした今回の社会保障改革路線は、「亡国の改悪」だとも言われています。
桑名市は、２０１５年３月に「桑名市地域包括ケア計画（第６期介護保険事業計画）」を策定し、その副題には、「全員参加型で２０２５年問題を乗り越えるための地域支え合い体制づくり」と書かれており、県下で唯一、率先して４月（昨年）から「総合事業」（要支援者の介護を保険給付から外し、自治体が実施する介護予防・日常生活支援総合事業等の地域支援事業）を開始しました。
そして、この「総合事業」への移行に伴って、３つの大きな問題が起こっています。
�� 住民主体による支援（サービスＢ）の「受け皿」は大丈夫なのか
訪問型 えぷろんサービス（シルバー人材センターに委託）
通所型 シルバーサロン（宅老所などに助成）
シルバー人材センター会員のボランティア精神に頼ることへの不安、女性会員が少ないことへの懸念等があり、利用者の生活・心身の状況を総合的に理解した適切なサービスの提供が行われるのか、事故等の場合の個人責任の所在など強い危惧があります。サロンが各地域に整備されてきていますが、週に何回といった頻回の回数と時間の長さが保障がされていません。
再び（２０００年に介護保険制度が始まった以前に）家庭回帰になり、当初介護保険が克服しようとしていた家族が支える介護に逆戻りするのではないか。サービスの担い手としてボランティア（地域住民・自治会・民生委員など）が強調されているが、要支援者への対応に必要な専門性は確保されているのでしょうか。
�� 「地域生活応援会議」による自立支援が強制にならないか
「地域生活応援会議」は、「介護保険制度が本来目指すべき高齢者の本物の自立を支援する」として、要支援認定者等について、「介護保険を卒業して地域活動にデビューする事を目標に介護予防（生活機能の向上）に資するケアマネジメントを多職種協議で提案するもの」です。
具体的には、毎週水曜日の午後に、中央地域包括支援センターのイニシアティブで開催され、ケアマネ等の作成したプランに対して、地域包括センターや保健センターの保健師、社会福祉士、管理栄養士、理学療法士、歯科衛生士、地区薬剤師会の薬剤師等約４０人が参加し意見を述べ合うものです。
内容は「できないことを代わりにするケア」から「できないことをできるようにするケア」になっており、介護保険を卒業させ、地域活動の担い手としてデビューさせるものです。
このなかの「くらしいきいき教室」では、成功報酬（卒業して６カ月が経過）としてサービス事業所、プラン作成機関、対象者に「元気アップ交付金」が支給されると言う大きな問題があります。
�� 「基本チェックリスト」優先で介護認定申請権の侵害にならないか
「総合事業」でサービスを受ける場合、介護保険（要介護・要支援）の認定を受ける必要はありません。生活機能低下を見る２５項目の簡易な「基本チェックリスト」で判定し、迅速なサービスの利用が可能になります。その反面、医師の関与がなくなり、判定結果やサービスの内容について不服審査請求ができません。制度がよく分からない高齢者が「総合事業」に流される事になります。
「基本チェックリスト」が優先実施され、介護認定の申請権が抑制・侵害される可能性があります。
高騰する保険料は漏らさず徴収（年金より）する一方で、約束に反して保険給付は行わない事（介護保険を利用させない）は、「国家的詐欺」とも言えます。今、桑名市において「地域包括ケアシステム」の構築に向けて、将来の介護保障・社会保障の姿を、立ち止まって考える必要があります。
【参考】 一覧表 桑名市の総合事業の多様なサービス
訪問型
訪問介護 従来のもの（３年間）
住民主体による支援（Ｂ） えぷろんサービス、おいしく食べよう訪問
短期集中予防サービス（Ｃ） 栄養いきいき訪問、お口いきいき訪問
移動支援（Ｄ） 通いの場応援隊
通所型
通所介護 従来のもの（３年間）
住民主体による支援（Ｂ） シルバーサロン、健康・ケア教室
短期集中予防サービス（Ｃ） くらしいきいき教室
村瀬博（三重短期大学非常勤講師）住民と自治２０１５年１２月号 三重県桑名市 要支援サービス見直しと「総合事業」を考える（Ｐ２４−２７）から
