活動日誌−活動日誌

【15.12.29】 日本軍「慰安婦」問題

日本共産党は問題解決に向けての前進と評価

 日本政府は、「当時の軍の関与」を認め、「責任を痛感している」と表明し、安倍首相は、「心からおわびと反省の気持ちを表明する」とした。
 日本政府が予算を出し、韓国政府と協力して「全ての元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復、心の傷の癒しのための事業」を行うことを発表した。

 日本共産党は、今回の合意とそれにもとづく措置が、元「慰安婦」の方々の人間としての名誉と尊厳を回復し、問題の全面的解決につながることを願う。

今日は、すべての新聞が社説で論評している。

【朝日社説】 慰安婦問題の合意 歴史を越え日韓の前進を
 戦後70年であり、日本と韓国が国交正常化してから半世紀。そんな1年の終わりに、両政府は最大の懸案だった慰安婦問題で合意に達した。
節目の年にふさわしい歴史的な日韓関係の進展である。両政府がわだかまりを越え、負の歴史を克服するための賢明な一歩を刻んだことを歓迎したい。
きのうあった外相会談の後、岸田外相は慰安婦問題を「軍の関与のもと多数の女性の名誉と尊厳を傷つけた問題」と定義し、「日本政府は責任を痛感している」と明言した。
50年前の請求権協定で「法的には解決済み」とする日本政府はこれまで、国家責任を連想させる言葉遣いに消極的だった。今回はその原則を維持しつつ、率直な表現に踏み込んだ。
安倍首相は日本の首相として元慰安婦に対し、「心からのおわびと反省」を表明した。
かつて慰安婦問題をめぐる「河野談話」の見直しに言及したこともある安倍首相だが、岸田外相を通じてとはいえ、談話の核心部分を韓国で表明したことには大きな意味がある。
■日本政府の責任明言
一方、韓国の尹炳世(ユンビョンセ)外相も日本政府に応えた。
今回の合意について、「日本政府の措置の着実な実施」という前提つきながら、「最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する」と言い切った。
日本側から「韓国は約束してもゴールポストを動かす」と批判されていたことを意識したうえでの確約の表明である。
両外相ともメディアを通じて両国民に固く誓ったのだ。合意をしっかり履行してほしい。
韓国政府は、元慰安婦の名誉と尊厳を回復し、心の傷を癒やすための財団をつくり、そこに日本政府が約10億円を国家予算から拠出する。
日本は90年代、国民の募金からなる「償い金」と、政府の資金による医療・福祉支援事業に首相の「おわびの手紙」を添えた「アジア女性基金」事業を始めた。東南アジアなどで成果を生んだが、韓国では反対の声が強まり、頓挫してしまった。
韓国側で基金の意義が理解されなかった要因は、さまざまあった。日本政府が必ずしも積極的な姿勢で事業に臨まなかったことや、「償い金」に民間募金をあてたことなどで、韓国側は責任回避だとして反発した。
両政府とともに、元慰安婦たちの支援者ら市民団体、メディアも含めて、当時の教訓を考えたい。
新たに設けられる財団の運営のあり方については今後、詰められる。何より優先すべきは、存命者が50人を切ってしまった元慰安婦たちのそれぞれの気持ちをくむことだろう。
韓国の支援団体は合意について「被害者や国民を裏切る外交的談合」と非難している。日本側からもナショナリズムにかられた不満の声がでかねない。
だが今回の合意は、新たな日韓関係を築くうえで貴重な土台の一つとなる。日本政府は誠実に合意を履行し、韓国政府は真剣に国内での対話を強める以外に道はない。
■互恵の関係強化を
50年前の12月18日。
日韓はソウルで基本条約と4つの協定の批准文書を交換し、新たな第一歩を踏み出した。
請求権のほか、漁業、文化財・文化協力、在日韓国人の法的地位の4協定はこれまで、その時々の実情に合わせて何らかの形で改良が加えられてきた。
現在の日韓関係の原点ともいえる「65年体制」の枠組みを、時代に応じて考えていくことは、いまを含む各世代の両国民が担う責務である。
この半世紀で日韓関係は大きく飛躍した。韓国の1人あたりの国民所得は、当時の100ドル余りが今や3万ドルの目前。そこには日本の経済協力金が役立った。そして日本も、急成長する韓国から莫大(ばくだい)な利益を得た。
ともに協力し合い、利益を広げる互恵の関係がこの半世紀の歩みだったし、これからもあるべき隣国関係の姿である。
日韓の国交正常化を強く後押しした米国は、今回の和解にも大きく関与した。この2年半、日韓両国はワシントンを主舞台として、激しい「告げ口」外交を展開してきた。
その結果、傷つき、疲れ果てた日韓が悟ったのは「不毛な争いは何も生み出さない」というあたり前のことであり、対話という原点に戻ることだった。
■安保など課題山積
経済だけでなく、安全保障や紛争・災害の人道支援、環境対策など、地球規模の課題が多い時代、アジアを代表する主要国同士の日韓が手を携えて取り組むべきテーマは数知れない。
両外相はきのう、ともに「日韓関係が新時代に入ることを確信している」「来年から新しい関係を切り開けることを期待する」と期待を述べた。
3日後の新年からは、日韓がともに前を向いて歩む50年の始まりとしたい。

【読売社説】 慰安婦問題合意 韓国は「不可逆的解決」を守れ
◆少女像の撤去も重要な試金石だ◆
未来志向の日韓関係の構築には、韓国が合意を誠実に履行することが大前提となろう。
岸田外相と尹炳世外相がソウルで会談し、慰安婦問題で妥結した。
日本は「責任を痛感」し、元慰安婦を支援する新基金に約10億円を拠出して、安倍首相がお詫(わ)びを表明する。両国は「最終的かつ不可逆的な解決」と確認する。
韓国は、ソウルの日本大使館前に設置された、慰安婦を象徴する少女像の撤去に努力する。
これらが合意の柱である。
◆新基金は軌道に乗るか
朴槿恵大統領は岸田氏との会談で、「韓日関係の新たな出発点になることを願う」と語った。
日本は、1965年の日韓請求権協定で元慰安婦らの補償問題は解決済みと主張してきた。新基金はあくまで人道支援であり、日本の法的な立場は損なわれない。ただ、政府の資金拠出が事実上の国家賠償と誤解されないか。
岸田氏は「日韓関係が新時代に入ると確信する」と語った。尹氏は「慰安婦の名誉と尊厳が回復され、心の傷が癒やされるよう祈念する」と強調した。
今年は国交正常化50周年の節目なのに、朴氏の慰安婦問題への過剰なこだわりによって祝賀ムードは乏しかった。合意が、停滞してきた日韓関係を改善する契機となるのか、見守りたい。
日本は95年にアジア女性基金を設置し、首相のお詫びの手紙や「償い金」などを元慰安婦61人に渡した。だが、韓国側は評価せず、国内向けに説明しなかったため、日本側に不満が残った。
この轍(てつ)を踏んではなるまい。
◆支援団体の説得がカギ
大切なのは、日韓共同の新基金事業を着実に軌道に乗せるとともに、韓国が将来、再び問題を蒸し返さないようにすることだ。
その主たる責任は無論、韓国側にある。かつて金大中、盧武鉉両大統領らが歴史認識に関して「今後、過去の問題は出さない」などと明言したのに、国内世論に流され、態度を翻したからだ。
大統領が交代するたびに、問題が再燃するようでは、外交は成り立たない。安倍首相が日韓合意後、「子や孫の世代に謝罪し続ける宿命を負わせるわけにはいかない」と強調したのは、もっともだ。
韓国の元慰安婦支援団体は、今回の合意を「被害者と国民を裏切った外交的談合だ」などと批判した。支援団体が設置した少女像の撤去にも反対している。
慰安婦問題の妥結が長引いた一因は、当事者意識を欠いた、世論任せの韓国政府の姿勢にある。
朴氏が11月の日韓首脳会談で具体的な妥結案を提示せず、「被害者が受け入れ可能で、韓国国民が納得できる解決策が必要だ」と語ったのは象徴的だ。
韓国政府が合意を真剣に履行するつもりなら、まず、合意に反対を唱える国内勢力を説得できるかどうかが問われる。少女像の撤去も重要な試金石となろう。
日韓合意には、両国が国連などで慰安婦問題について、互いに非難、批判することを自制することが盛り込まれた。
韓国が慰安婦関連資料を国連教育・科学・文化機関の世界記憶遺産に登録する準備をしていることなどが、念頭にあろう。
国際社会の表舞台で日韓両国が対立している姿を露呈することは双方にとってマイナスだ。不毛な争いには終止符を打ちたい。
◆「嫌韓感情」どう収める
朴氏に求められるのは、自らが煽(あお)って日本国内で高まった「嫌韓感情」を収める努力だろう。第三国で日本を批判する「告げ口外交」や、韓国系団体が米国各地で慰安婦像を設置している問題への反省も必要ではないか。
日本の資金拠出については、国内から「譲歩しすぎだ」「朴政権は放置しておけば良い」といった異論が出ている。
それでも安倍首相が「自分が責任を取る」として、拠出を決断したことには、日韓関係の改善を通じて、核・ミサイル開発を続ける北朝鮮に対する日米韓の連携を復活させる狙いもうかがえる。
日韓両国が歴史認識の問題を克服することができれば、最近、中国に急速に接近する韓国を日米の側に引き戻すことにつながる。歴史を外交カードに利用する中国を牽制(けんせい)しつつ、日中関係を前に進めるという戦略的な意義もある。
日韓関係にはなお、元徴用工の損害賠償訴訟、日本産水産物の輸入規制、日韓自由貿易協定(FTA)交渉など、様々な懸案が山積している。一つひとつ着実に解決していく努力が欠かせない。

【毎日社説】 慰安婦問題 日韓の合意を歓迎する
日本と韓国が慰安婦問題を最終決着させることで合意した。四半世紀にわたって両国間に突き刺さってきたとげだ。戦後70年、日韓国交正常化50年という節目の年に合意できたことを歓迎したい。
岸田文雄外相と韓国の尹炳世(ユン・ビョンセ)外相が合意し、共同で記者発表した。日本が村山富市内閣時代に設立したアジア女性基金は韓国に受け入れられなかった。それを考えると、両国が知恵を出しあって合意に至ったことは画期的なことである。
日本側は外相会談で慰安婦問題に関して「責任を痛感する」と表明した。日本はこれまで、1965年の日韓請求権協定で法的には解決済みだとして「道義的な責任」という表現にとどめてきた。
こじれた四半世紀
一方で韓国は「反人道的な不法行為」である慰安婦問題は請求権協定で解決されていないという立場から「法的責任」を求めてきた。
道義的か法的かを、あえて明確にしないことで双方が歩み寄り、決着につながった。
日本政府が韓国の設立する財団に10億円を拠出する点も大きい。アジア女性基金は国民からの寄付金を軸にしたため韓国側が「政府の責任をごまかそうとしている」と反発した。公的な資金を出すことは政府の責任をより明確化させることになる。
今回の合意について「最終的で不可逆的な解決」であることを確認したことは両国の信頼構築につながる。これにより、国連など国際社会での非難合戦という不毛な争いにも終止符が打たれるはずだ。
慰安所が生まれ、定着したのは日中戦争の時期だ。兵士による強姦事件の多発に頭を痛めた軍が業者に開設させた。軍は細かい規則を作って管理する一方、避妊具を支給したり、移動に便宜を図ったりしていた。
貧困のために慰安婦とならざるを得なかった女性も多かったと言われる。93年の河野談話が指摘したように「意思に反して集められた事例が数多く」あったことは否定しがたい。慰安婦制度が女性の尊厳を踏みにじるものであることは明白だ。
慰安婦問題が注目されたのは91年に初めて実名で証言する韓国人女性が現れてからだ。87年の民主化を機に日本の植民地支配の歴史を問い直そうとする機運が高まったことが背景にあった。経済や文化など多方面の交流が活発化する一方で、歴史認識を巡る摩擦は深まっていった。
こうした流れを受けて、日本では村山談話やアジア女性基金によって和解を探ろうという動きが出た。
しかし、安倍晋三首相はかつて河野談話見直しを公言していた。第1次政権だった2007年には、首相に近い政治家らが米紙に慰安婦問題に関する反論広告を出して米政界の反発を買い、日本を批判する米下院決議につながった。
韓国側では、慰安婦問題での政府の不作為を「違憲」とした憲法裁判所の11年の決定が転機となった。時の李明博(イ・ミョンバク)政権は慰安婦問題を対日外交の前面に出すようになった。13年に就任した朴槿恵(パク・クネ)大統領は慰安婦問題の進展がなければ日本との首脳会談に応じないという強硬姿勢を取るにいたった。
合意の背景には、日韓共通の同盟国である米国から関係改善を求められていたことがある。それでなくとも日韓の連携は双方にとって自国の外交・安保政策に必須のものだ。
後戻りさせずに
日韓両国内でも正常化以来最悪と言われる関係に「このままでいいのか」と懸念する声が出ていた。年間500万人が往来する両国関係が停滞したままでいいはずがなかった。
合意を受けて安倍首相は「この問題を次の世代に決して引きずらせてはならない」と語った。朴大統領もその思いを共有しているはずだ。
ただし、画期的な合意であっても不満を持つ人々は残る。そうした時に大局的見地から国内をまとめていくのが政治指導者の役割だ。
韓国政府は、日本が強く問題視する在韓日本大使館前に建つ少女像の撤去にも前向きな姿勢を見せた。韓国で慰安婦問題の象徴になっているだけに簡単ではなかろう。真の和解につながる歴史的合意とするためには、まだ多くの作業が残っている。日韓両国が互いを信頼し、協力していかねばならない。
日本は、解決策が最終的なものとなる確約を重視した。韓国政府が日本の対応をいったん評価してから、世論の反発を受けると一転して強硬姿勢に転じることを繰り返してきたという思いがあるからだ。アジア女性基金の取り組みを無視されたといういらだちもあった。
ただ、問題を蒸し返してきたのは韓国側だけではない。政府間で前向きな動きがあっても、日本の政治家やメディアが植民地支配を正当化したり、元慰安婦を中傷したりしたことが、日韓関係をより複雑化させてきたことは事実だ。
日本にとって韓国は最も重要な隣国である。外交はそもそも互いに譲り合わなければ成り立たない。今回の合意内容について、どちらが多く譲ったかの「勝ち負け論」に陥ることなく、日韓の新時代を切り開く基礎にすべきである。

【日経社説】 「慰安婦」決着弾みに日韓再構築を 
日本と韓国の関係が「戦後最悪」といわれるほど冷え込んだ最大の要因は、旧日本軍の従軍慰安婦問題をめぐる対立だった。その障害がようやく取り除かれる見通しとなった。日韓関係の再構築に向けた弾みとしたい。
岸田文雄外相と尹炳世(ユン・ビョンセ)外相がソウルで会談し、慰安婦問題を「最終的かつ不可逆的」に解決することで合意した。具体的には韓国政府が元慰安婦を支援するための財団を設立し、日本政府が約10億円を政府予算から一括拠出することになった。
韓国は世論対策万全に
日本政府は「責任を痛感」し、安倍晋三首相は元慰安婦に「心からのおわびと反省の気持ち」を表明する。さらに両国は国際社会でこの問題をめぐる非難を控えることを確認。韓国側はソウルの日本大使館前に設置された慰安婦を象徴する「少女像」について、「関連団体との協議を通じて適切に解決するよう努力する」とした。
日本政府は慰安婦問題を含めた戦後の賠償問題について、1965年の日韓国交正常化の際に結んだ請求権協定で「完全かつ最終的に解決された」との立場を貫く。今回もその原則は堅持しつつ、心身に深い傷を負った元慰安婦への人道的な配慮から政府予算による拠出を決めたようだ。
韓国政府も日本が求めた「最終的解決」に同意し、「少女像」の大使館前からの撤去にも主体的に取り組む姿勢を示した。双方の譲歩が妥結につながったといえる。
90年代から外交的な懸案として浮上した慰安婦問題はたびたび、日韓の関係改善を妨げてきた。
近年では2011年、韓国の憲法裁判所がこの問題で日本と交渉しない韓国政府の「不作為」を違憲と判断。当時の李明博(イ・ミョンバク)大統領が日本に強硬に解決を迫るようになり、進展がままならないなか、業を煮やして日韓双方が領有権を主張する竹島(韓国名は独島)に上陸した。
朴槿恵(パク・クネ)政権発足後も、韓国は慰安婦問題決着を首脳会談の事実上の前提条件とし、日韓首脳会談が3年半も開かれないという異常な状態が続いた。
この間、日本側の対応にも原因がなかったわけではない。典型例は安倍政権が、旧日本軍の関与を認め謝罪した「河野談話」を再検証したことだ。韓国はこれを談話の否定と受け止め、相互不信を一層深めた。さらに慰安婦問題を女性の人権問題ととらえる欧米の疑心も呼び、日本への不信が国際的に広がる要因ともなっていた。
今回の合意には日韓双方に不満の声も出るだろう。だが、ようやく達成した合意である。過去の苦い教訓も踏まえつつ、日韓が着実に履行することが肝要だ。
とくに韓国政府には世論対策を含めた真摯な対応を求めたい。過去に日本側が実施したアジア女性基金を通じた償い事業は、元慰安婦を支援する市民団体らの抵抗に遭い、韓国で十分な成果を上げられなかった経緯があるからだ。
日本大使館前の「少女像」もその市民団体が設置した。朴政権は責任をもって、世論や市民団体を粘り強く説得してもらいたい。
日韓の間ではここにきて、関係改善への機運がようやく広がりつつある。韓国の憲法裁が先に、日韓の請求権協定を違憲とする訴えを却下したのはその一例だ。
安保協力は待ったなし
もちろん、慰安婦問題の決着で歴史をめぐる対立が解消したわけではない。竹島の領有権問題、歴史教科書をめぐる対立は根深く、戦時中に日本企業に徴用された韓国人への損害賠償を求める訴訟も韓国で相次いでいる。
大切なことはこうした歴史問題のあつれきを最小限に抑えつつ、未来に向けた協力や連携を地道に重ねていくことだ。
日韓は距離的に近い隣国同士だ。互いに主要な貿易相手国でもある。日米が主導して合意した環太平洋経済連携協定(TPP)には、韓国も参加に意欲を示している。アジア太平洋に新たな通商の枠組みを定着させるうえでも、互いに協力する余地は大きい。
安全保障面でも、ともに米国の同盟国として北朝鮮の核兵器やミサイル開発、中国の海洋進出など北東アジアを揺さぶる脅威に共同で対処していく必要がある。とくに北朝鮮情勢をめぐる情報共有を密にするため、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)などの締結を急ぎたい。
今年は日韓国交正常化50年の節目の年だ。慰安婦問題の決着はその一年の締めくくりにふさわしい出来事となった。新たな50年に向け、一歩ずつ前に踏み出したい。

【産経主張】 慰安婦問題で合意 本当にこれで最終決着か 
 ■韓国側の約束履行を注視する
不正常な状態が続く日韓関係をこれ以上、放置できなかった。膠着していた慰安婦問題の合意を政府が図ったのは、ここに重点を置いたものだろう。
東アジアに安全保障上の懸念が強まる中、日韓関係の改善は日米韓の枠組みを機能させる。日本の国益にかなうことは明らかだ。
「子や孫に謝罪し続ける宿命を負わすわけにはいかない」という安倍晋三首相の強い思いも後押ししたのだろう。
そうした意図が貫徹される大前提は、外相会談での合意に基づき、この問題が今後、二度と蒸し返されないという国と国との約束が守られることだ。
≪「軍関与」に根拠はない≫
岸田文雄外相と韓国の尹炳世外相が明確に述べたのは、この妥結が「最終的かつ不可逆的な解決」であり日韓関係が未来志向の新時代へ発展する、ということだ。
両外相が妥結を経て「(日韓は)国際社会で互いに非難・批判することを控える」と共に言及した約束もきわめて重い。朴槿恵大統領は、米中首脳らとの会談などで、日本批判を繰り返してきた。こうしたいわゆる「告げ口外交」の終結を宣言したのだと受け止めたい。
だが、合意内容を具体的にみると、日本側が譲歩した玉虫色の決着という印象は否めない。このことが将来に禍根を残さないか。
その一つが、安倍首相が表明したおわびの内容として、慰安婦問題について「当時の軍の関与のもとに、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた」と、「軍関与」に言及したことだ。
アジア女性基金事業に伴う歴代首相名のおわびの手紙と同様の表現という。しかし、そのもととなった平成5年の河野洋平官房長官談話が、政治的妥協の産物であることは、政府検証でも明らかにされたはずだ。
慰安婦募集の強制性を認めた河野談話が破綻したいま、「軍関与」という誤解を生む表現を使う根拠はない。
強制連行説が崩れた後、「自由が奪われた」などとして女性の人権問題をあげ、「広義の強制性」を問題とし始めたのは、議論のすり替えにほかならない。
慰安婦問題で看過できないのは、歴史の歪曲や事実に基づかない拡大解釈で、日本の名誉が著しく傷つけられてきたことだ。
日本軍が慰安婦を「強制連行」したとの誤解を広げた河野談話の見直しも改めて求めたい。こうした問題を放置したまま、10億円規模の新基金に政府の予算を投じることにも、日本国民の理解が得られるのか。疑問である。
謝罪を繰り返す日本の譲歩が、問題の解決につながらなかったのは、アジア女性基金が韓国側に受け入れられなかった経緯をみても明らかである。
≪大使館前の像を撤去せよ≫
戦時徴用の問題を含めて賠償問題が蒸し返されるのは、韓国政府が日韓請求権協定について国民に十分説明してこず、不満が残ったことが原因だ。
本来は、韓国自身が国内問題として解決すべきだった。
在韓日本大使館前に設置された慰安婦像について、尹外相は「日本政府が公館の安寧、威厳の維持といった観点から懸念している」と言及したが、その撤去については「関連団体との協議を通じて適切に解決されるよう努力する」とするにとどまった。
岸田外相は「適切な移転がなされるものと認識している」と述べた。国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界記憶遺産への慰安婦問題に関する資料登録をめぐっても「韓国が申請に加わることはないと認識している」と述べた。
これらの実現性については、不透明なままだ。まず、大使館前の慰安婦像を撤去することから、始めるべきだろう。
朴大統領は11月の日韓首脳会談などの際、「被害者が受け入れることができ、韓国の国民が納得できるような解決策」を求めると発言してきた。
政府間で合意した以上、指導者はこれを受け入れるよう国民を説得し、支援団体などを納得させるべきだ。
韓国側は過去、日本側の謝罪を受け何度か、慰安婦問題の決着を表明しながら、政権が交代し、蒸し返した経緯がある。
「妥結」の本当の評価を下すには、まだ時間がかかる。

【中日社説】 従軍慰安婦問題で合意 「妥結」の重さを学んだ 
日韓外相会談で、旧日本軍の従軍慰安婦問題を最終決着させると合意した。最大の懸案が解決に向かう。来年は対立から協力へと、流れを変えたい。
岸田文雄外相と尹炳世外相はソウルで会談し、慰安婦問題を「最終的、不可逆的に解決する」と確認した。韓国政府は今後、問題を蒸し返さないという明確な約束である。
元慰安婦を支援する財団を韓国政府が設立し、日本政府は財団に約10億円を拠出することで合意した。岸田外相は、安倍晋三首相がすべての元慰安婦に対し「責任を痛感し、心からのおわびと反省の気持ちを表明する」ことを明らかにした。
米国が背中押した
韓国で初めて元慰安婦の女性が名乗りを上げてから24年。ようやく解決の道筋ができた。1990年代に元慰安婦の支援事業として取り組んだ「アジア女性基金」や、民主党政権時代に提案された救済案など、これまで蓄積された日本の取り組みが実を結んだといえよう。
日韓外相は「解決」「決着」という言葉を使ったが、一連の交渉経過を見れば、キーワードは「妥結」という表現ではないか。実は韓国語にも妥結(タギョル)という漢語があり、日韓の辞典を見ると「利害の対立する者が折れ合って、話をまとめる」という部分が共通している。両首脳は当初の主張を和らげ互いに譲歩した。国内の反対世論を説得する決断もしたということだろう。
両政府とも妥結を急がねばならない事情があった。
元慰安婦の韓国人女性は生存者46人、平均年齢は90歳近く、交渉をずっと続ける時間的余裕はなかった。また慰安婦問題で関係が冷えこんだままでは、経済、安保など協力すべき分野が進まないという不満が、双方の国内から出ていた。
日韓双方の背中を押したのは米国だった。オバマ政権は韓国に対し、歴史問題にこだわるばかりでは日米韓の共助体制が崩れていくと批判した。一方で、戦時下の女性に対する性暴力は深刻な人権侵害だとして、日本側に慰安婦問題の解決を迫った。
戦後70年談話が転機
日韓両政府は当初、自説を強く主張していた。安倍政権は昨年、慰安婦問題で日本の官憲の関与を認めた「河野談話」の検証をしたが、国際社会は強い懸念を示した。河野談話の検証が慰安婦問題そのものを否定しかねないと見たからだ。
大きな転機は、8月に安倍首相が発表した「戦後70年談話」だった。首相は従軍慰安婦には直接言及しなかったが、「戦時下、多くの女性たちの尊厳や名誉が深く傷つけられた」と述べた。
慰安婦問題は65年の請求権協定によって解決済みというのが日本政府の原則的な見解だが、首相の談話は人道的な見地から救済の余地を示したものだ。韓国側に歩み寄ったといえよう。
この日の外相会談で言及された安倍首相の見解には、女性の名誉と尊厳という70年談話と同じ表現があったことに注目したい。
朴槿恵大統領も妥結に向けて動いていた。慰安婦問題の解決に進展がない限り首脳会談には応じられないという立場だったが、今年に入り「歴史問題と経済、安保などの懸案は分けて対応する」と柔軟姿勢に変わった。
両政府が歩み寄り、ようやく妥結にこぎつけたことを、重く胸に刻みたい。ここ数年、広がった「反日」「嫌韓」という不幸な風潮を変えていかねばならない。
今後は両政府が国内世論をどう説得するかが重要になる。韓国の元慰安婦の支援団体「挺身隊問題対策協議会」は、今回の合意を評価せず、日本政府の法的責任を追及している。
日本の世論調査でも、慰安婦問題で譲歩する必要はないとの回答が多数を占める。政府予算を使って救済を図るのは、事実上の賠償ではないかという批判が予想される。在ソウル日本大使館前に置かれた慰安婦問題を象徴する少女像についても、撤去する確約はなかった。
火種は残っている
歴史問題での火種は消えたわけではない。戦中の元徴用工問題で65年の請求権協定が違憲だとする訴訟で、韓国憲法裁判所は今月、訴えを却下した。しかし、徴用工問題では地裁、高裁で争いが続いている。
韓国政府には日韓条約を尊重して、司法判断とは一線を画すよう望むが、日本側も、とりわけ政治家には歴史認識をめぐる発言に慎重さが必要だ。外相会談で弾みがついた関係改善の流れを止めないよう、日韓両国民の努力も求められる。

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