活動日誌−活動日誌

【15.06.13】 今日の3社の社説は「派遣法改正案」だ

共に、「派遣法改正案」と維新の対応に批判

朝日社説 「派遣法改正案」待遇改善にはほど遠い

労働者派遣法の改正案を巡る衆議院の委員会での審議が終了し、来週中に採決される見通しとなった。改正案は、派遣労働者と派遣先企業の労働者の待遇をできるだけそろえる「均等待遇」の原則が欠けたままとなって、派遣労働者の待遇が改善される見通しはない。
派遣労働者の数は一時期より減ったとは言っても約111万人を数えている。働き手の間でも不平等が広がる中で、派遣労働者の処遇を改善していくことは、当事者にとって喫緊の課題であり、日本経済全体を底上げするうえでも大切な取り組みだったはずである。
ところが、衆院委での論議は、自民と維新の協議で一部が骨抜きになった。国民と経済全体にとって重い法案の審議が果たしてこれで良いのか。法改正には参議院での審議も含めて論議する時間がある。論議を尽くしてほしい。
労働者派遣では、雇用責任を負う派遣会社と、実際に働いている派遣先が違う。働き手にとっては、自分にあった職場をみつけるメリットがある半面、派遣先の意向で待遇が左右されたり、失職の不安にさらされたりするデメリットがある。
改正案は、派遣会社にキャリアアップの措置を義務づけ、派遣労働者の能力を高めて待遇を良くしたり、正社員になってもらったりする道筋を描く。
しかし、どんなに派遣労働者が能力を高めても、派遣先の対応が変わらなければ待遇は改善しない。そこで、同じような仕事をしている人の待遇を同じにする「均等待遇」の原則が必要になる。
多様な働き方を広げるためにも、この原則は不可欠だ。原則を欠いたまま、コストカットのために派遣労働が広がることは避けるべきだ。
維新、民主など3党が議員立法を目指していた「同一労働・同一賃金」推進法案は、あるべき方向を示していた。派遣労働者と派遣先の労働者の待遇を均等にする法律を、1年以内に作ることが規定されていたからだ。議員立法は、派遣法改正案に足りない部分を補うものとして期待されていた。
ところが、維新と自民との協議で、そこが後退して、現行法と変わらなくなってしまった。
改正案は、派遣会社をすべて許可制にし、責任を強化するなど評価すべき点はある。しかし、待遇が悪いままで派遣労働が増えれば、日本の雇用全体の不安定化につながる。国会は、このまま法案を成立させてはならない

毎日社説 「派遣法改正案」不可解な維新の対応

今国会の焦点のひとつである労働者派遣法改正案をめぐる動きが急だ。野党の維新の党が衆院厚生労働委員会での法案採決を認める方針を固めたことを受けて、与党は来週に衆院を通過させる構えだ。
維新の党は、野党が共同提案した「同一労働同一賃金法案」の修正に与党が応じたことを評価して柔軟姿勢に転じた。だが、修正案は野党案を骨抜きにした内容だ。不可解な与党への接近と言わざるを得ない。
派遣法改正案は派遣労働の期限を事実上撤廃することで「派遣は臨時的」という原則を転換する法案だ。低賃金の派遣労働を固定化させる懸念があるため、民主、維新、生活の党は同じ労働であれば非正規労働者にも正規と同じ賃金を支払う「同一労働同一賃金法案」を対案として提出し、対抗していた。
ところが野党案を修正したうえで共同提出することで今度は与党と維新の党が実質合意、事態は急転した。維新の党は修正の見返りとして、派遣法改正案に反対はするものの、採決は認める方針を固めた。このため派遣法改正に抵抗していた野党は事実上、分断される形となった。
維新の党は与党の歩み寄りを「一歩前進」と説明している。野党が個別政策で与党と協調すること自体はいちがいに否定できない。
だが野党案のうち、正規職員と非正規職員の同一賃金実現を図るとした核心部分には「均衡待遇」とのあいまいな考え方が加えられ、賃金格差を容認する余地を残した。法案の根幹に関わる骨抜きであり、野党案を事実上ほごにしてまで歩み寄る必要があったか、疑問をぬぐえない。
維新の党はもともと、安倍政権と距離を置く江田前代表ら旧結いの党系の勢力と、橋下大阪市長を中心に安倍首相と親和的な旧日本維新の会系の二重構造を抱える。
民主党との連携や再編についても橋下氏に近い勢力は慎重論が強く、今回の与党との共同修正を主導したとみられている。安保法制の審議をにらみ、違うテーマとはいえ、野党の連携にくさびが打たれた意味合いは小さくなかろう。
維新の党では今回の対応をめぐり内部批判が噴出するなど、路線対立が表面化している。大阪都構想の頓挫を受けて松野代表の下で再出発したものの、党内状況次第で政策が揺れ動く不安がつきまとう。
安保法制審議で与野党の対立が強まる中、野党第2党の維新の党の対応が国会に与える影響は決して小さくない。不可解な与党への接近を繰り返せば結局、取りこまれて補完勢力の道を歩む。野党の立場である以上は安倍内閣と対峙していく責任をしっかりと自覚してほしい。

中日社説 「同一賃金法案」骨抜きでは意味がない 

派遣社員の待遇改善を目指した「同一労働・同一賃金」推進法案が事実上骨抜きになった。派遣労働の固定化につながる改正法案は成立の見通しだ。今よりさらに企業寄りの改悪が進むのではないか。
政府が提出している労働者派遣法改正案は、派遣社員の正社員化も雇用の安定化も期待できない内容だ。むしろ企業にとって「人件費が安く、雇用の調整弁のような働かせ方ができる便利な派遣社員」を増やしかねないものだ。
そんな「安くて便利」な派遣労働を改めさせようというのが「同一労働・同一賃金」推進法案(同一賃金法案)だった。民主、維新、生活の野党三党が派遣法改正案の「対案」として提出した。派遣受け入れ企業の正社員と派遣社員が同じ内容の仕事をしていれば賃金格差を改善し、いわば「安くない派遣」を目指す内容だった。
しかし、この当初案が与党との修正に維新が応じて骨抜きになってしまった。
これまで衆院解散や条文誤記載で二度廃案になった派遣法改正案の今国会での成立を期す与党は、採決への協力を引き出すために維新に同一賃金法案の修正協議を持ち掛けた。維新内の大阪系議員は先の大阪都構想の住民投票で側面支援してくれた首相官邸への恩義があり、修正に応じたとされる。
維新執行部は野党協調を標榜してきたが、それより党内の対立回避を優先したのだろうか。
当初案は、派遣労働者と、受け入れ企業の正社員の待遇について「均等の実現を図る」としていたが、修正で「均等な待遇および均衡のとれた待遇」に変更された。これでは大幅な賃金格差は容認され、企業は勤続年数や責任の重さなどを踏まえ待遇のバランスを考慮するだけでよい。
さらに一年以内の立法措置を義務付けた部分も「三年以内」「立法を含む」に後退。自民党内に「一つ残らず骨を抜いた」との声があるように完全な骨抜きである。
正社員の大多数は能力に応じて賃金が上がっていく「職能給」で、非正規労働は業務で賃金が決まる「職務給」だ。一足飛びに均等待遇は実現困難だが、野党の当初案はまず非正規の待遇を改善し、見過ごせないほどの格差を縮めていこうとの狙いだった。

日本経済の長期停滞は少子高齢化が主因である。それは低賃金の派遣労働者増大が拍車をかけた。であるならば派遣労働の待遇改善こそが最大の成長戦略のはずだ。
(註、ここが分かっていない。)

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