活動日誌−活動日誌
【13.09.03】 8月23日(金)、24日(土)に行われた第5回生活保護問題議員研修会(名古屋)から
尾藤廣喜代表(弁護士・生活保護問題対策全国会議)の「真の生存権保障を確立するために」と題した最後のまとめの講演の要旨
1、生活保護をとりまく状況
・8月1日より過去にない生活扶助基準の引き下げ(削減幅平均6.6%、最大10%、)。3年間で総額670億円を減額する。
・6月に廃案となった生活保護法の「改正」案の再提出(?申請手続きの厳格化、?扶養義務者に対する調査権限の強化、?不正受給対策の強化など)。
・5月に「就労可能な被保護者の就労・自立支援の基本方針」通知し、働ける年齢層に対する就労指導を一層強化。
・問題の多い「生活困窮者自立支援法」も再提出予定。
2、生活保護制度の利用者数の増加状況
1995年 88万人、2000年 107万人、2005年 148万人、2010年 195万人、2013年現在 215万人
3、増加の原因はどこにあるのか
・不正受給が原因ではない。2010年 25,355件(1.8%)129億円(0.38%)不正受給とされるものの中には、高校生の子どものアルバイト料を申告しなかった例などがある。
・「高齢者世帯」「母子世帯」「傷病・障がい者世帯」「その他の世帯」の中で、「その他の世帯」の構成が7.4%から16.2%に増加し、年齢階層別にみると50歳以上の方が54.9%。全体の年齢階層別分析では、70歳以上の伸びが最も大。
・利用率(生活保護を利用している人の割合)と捕捉率(本来生活保護が必要な生活レベルの人で実際に保護を利用している人の割合)が日本では異常に低い。日本の利用率1.6%、捕捉率15−18%、ヨーロッパでは利用率5%、捕捉率50−90%。
・生活保護制度利用者が増加している真の理由は「深刻化する貧困」である。
4、貧困克服のために何が必要か(原因に対する対策)
・労働の安定(まともな仕事があり、仕事に就けば何とか生活できる賃金が得られる)
・社会保険の整備(雇用保険給付の充実、求職者支援法を使いやすく)
・最低保障年金の創設
・低所得者向けの家賃補助制度の創設
5、生活保護法「改悪」の根源は、社会保障制度改革推進法(2012年8月成立)。
・「安定した財源を確保しつつ受益と負担の均衡が持続可能な社会保障制度の確立」を目的としている。
・社会保障費の抑制を謳っている。
・自助、自立の強調。公助は後退。
・財源として消費税収入をあてにしている。
・生存権を保障した憲法25条を空洞化しようとしている(解釈改憲)。
・生活保護との関係で、?不正受給への厳格な対処、?生活扶助・医療扶助等の給付水準の「適正化」、?就労支援の強化等を求めている。
6、「社会保障国民会議」報告書の内容(2013年8月提出)
・総論 社会保障を全世代対応型に転換する(前世帯から費用を徴収)。
負担能力に応じた負担(真に央の負担かは疑問)。自助の強調。
・各論 医療における窓口負担の強化。
年金の給付額引き下げと支給開始年齢の引き上げ。
介護保険の利用者負担割合の増と軽度者について介護保険サービスの対象から除外。
7、私たちは何をなすべきか
・生活扶助基準引き下げに1万人規模の審査請求
・地方議会で引き下げ反対の意見書採択
・国会へ生活保護法「改悪」法案を再提出させない。
・生活保護の「改悪」が何をもたらすかを各地で明らかにしていく。(最低賃金就学援助基準の引き下げ、住民税非課税基準の引き下げ、年金の支給額の更なる引き下げ)
・社会保障全体の大きな後退に反対する運動との連帯
・ナショナルミニマムとしての生活保護制度である事の議論
・捕捉率100%をめざす。
・全国にもれなく身近な相談機関を設置・充実させる。