活動日誌−活動日誌

【12.08.23】 明日から、第4回生活保護問題議員研修会に埼玉へ行ってきます。

生活保護問題対策全国会議が、平成25年度予算概算要求基準について、撤回を求める声明を発表いたしました。

声なき弱者を犠牲とすることを国是にしてよいのか
生活保護を「生け贄」とする平成25年度予算概算要求基準を撤回せよ!
              2012(平成24)年8月22日
              生活保護問題対策全国会議 代表幹事 弁護士 尾藤廣喜

1 生活保護を予算削減の「生け贄」とする概算要求基準
 政府は,本年8月17日,2013年度予算の概算要求基準(以下「本概算要求基準」という。)を閣議決定した。
本概算要求基準は,昨年8月に改訂された「『中期財政フレーム(平成24年度〜平成26年度)』に定められた『歳出の大枠』71兆円を遵守する」ことを目的として謳っている。そのために「義務的経費も含めた歳出全般について聖域視せず,」「徹底した歳出の効率化を図る」とし,中でも「特に財政に大きな負担となっている社会保障分野についても,これを聖域視することなく,生活保護の見直しをはじめとして,最大限の効率化を図る。」としている。さらに,別紙(1(1)?)では,年金・医療等に係る経費の高齢化等に伴う自然増(計8,400億円)については容認する姿勢を示しつつ,重ねて「生活保護の見直しをはじめとして合理化・効率化に最大限取り組み,その結果を平成25年度予算に反映させるなど極力圧縮に努める」ものと強調している。
 要するに,?「歳出の大枠71兆円」を遵守するために,これまで聖域とされてきた社会保障分野の支出を削る,?そうは言っても,高齢化に伴う自然増(8,400億円)は止めようがないので,その分も含めて生活保護を見直すことで削る,というのである。
 しかし,私たちは,このような政府の方針は到底容認できない。

2 生活保護費が増えるのは当然であり,むしろ深化・拡大する「貧困」に対応できていないことが問題である
 確かに,近時,生活保護利用者数と生活保護費は年々増加している。しかし,それは,不安定・低賃金の非正規労働者が全労働者の3分の1を超え,失業率も高止まりしたままである等雇用が不安定化していること,高齢化が急速に進んでいるのに年金制度が脆弱で生活保障機能が弱いことなどに起因している。原因は,生活保護制度にあるのではなく,その手前のセーフティネットが脆弱であることにある。「貧困」の拡大によるすべての負荷が生活保護制度にかかっていることが問題なのである。
 しかも,増えたとは言え,わが国の生活保護の利用率(全人口のうち生活保護利用者数が占める割合)は僅か1.6%であって,先進諸国(ドイツ9.7%,イギリス9.3%,フランス5.7%等)の中では異常に低い。これは,生活保護の捕捉率(利用資格のある者のうち実際に利用している者が占める割合)が2〜3割り程度と,これも異常に低いことに起因している。現在の日本では,700万から1000万人もの人々が,本当は生活保護を利用すべきなのに利用できていないのである。
 今年に入ってから,札幌市,さいたま市,立川市,南相馬市などで、これまでハイリスクとは捉えられていなかった複数世帯での餓死・孤立死事件が相次ぎ,貧困のさらなる深化・拡大とセーフティネットの破綻がますます明らかとなっている。
 すなわち,今の日本は,生活保護利用者が増えて当然の社会構造にあり,むしろ,貧困の深化・拡大に生活保護利用者の増加が追いついていないことこそが問題なのである。この事実を冷静に直視する必要がある。

3 財政目的での生活保護の抑制は餓死・孤立死・自死等を必ず招く
 1で述べたとおり,本概算要求基準では,社会保障や生活保護を「聖域視しない」という言葉が繰り返されており,自民党政権末期の小泉政権下で掲げられた「聖域なき構造改革」路線が亡霊のごとく復活している。
 小泉政権は,「骨太の方針(経済財政運営と構造改革に関する基本方針)」によって,社会保障費の削減策を相次いで打ち出した。その結果,「厚生労働省の直轄地」「生活保護行政の優等生」と言われた北九州市において,2005年から2007年にかけて3年連続で生活保護をめぐる餓死・自死事件が相次いで起こった。同市では,生活保護予算を年間300億円以下に抑える等の「ヤミの北九州方式」と呼ばれる徹底した歳出抑制策を講じたがため,こうした悲劇が頻発した。
こうした社会保障費の抑制策に対する国民の厳しい批判が沸々と沸き起こって,歴史的な政権交代につながったことは記憶に新しいところである。
 そもそも,生活保護制度は,憲法25条が保障する生存権を具体化した「最後のセーフティネット」と言われる制度である。「最後」ということは,そこで受け止められなければ後には何もないということである。まさに,人の命,生き死にに直結する制度である。だからこそ,本来,財政的見地から給付を制限するようなことがあってはならず,健康で文化的な最低限度の生活は,必ず保障しなければならないのである。
にもかかわらず,こうした生活保護制度をターゲットとして,財政的見地から抑制,削減を図ればどうなるか。その結果は自ずと見えている。困窮者は否応なく餓死,孤立死,自死,貧困ゆえの犯罪に追い込まれ,全国各地であまたの悲劇が生まれるであろう。

4 今ほど生活保護の役割が大きくなっているときはない。なのになぜ生活保護を狙い打ちするのか。 
 上記のとおり,今ほど生活保護の役割が大きくなり必要とされているときはない。にもかかわらず,なぜ生活保護が狙われるのか。それは,第1に,生活保護の削減は,基礎年金の削減を招き,さらに,就学援助金等各種低所得者施策の限度額の引き下げにつながるからである。これによって,国・企業の「貧困層」に対する財政支出(負担)を節約することができる。また,第2には,生活保護を利用している人々は,高齢・障がい・疾病等さまざまなハンディを抱え,孤立させられ,声をあげにくい状況に追いやられているからである。また,他の社会保障分野に比べて,私たちを含めて当事者や支援者の運動が,残念ながら,まだまだ全市民的な広がりをみせるまでに浸透しきれていない状況にあるからである。要は,弱くて叩きやすいからターゲットにされているのである。
 しかも,今回人気お笑いタレントの母親の生活保護利用を自民党議員らがやり玉にあげたことによる異常なバッシング報道の余波で,今や,生活保護に対する悪しきイメージが定着している。政府・財務省は,この時期を狙って,生活保護を叩けば,強い反発もなく,自民党政権時代からの懸案であった生活保護基準の引き下げ等も実現でき,社会保障費全般の抑制へと大きく舵を切ることができると見ていると思われる。
 つまり,政府は,最も弱い立場にある生活保護制度をいわば「生け贄(スケープゴート)」として叩いてみせることによって,歳出削減をアピールし,他の制度への波及効果も狙っているのである
これは,憲法で保障された「生存権」を無視し,今こそ生活保護制度が果たすべき重要な役割を全否定する,国家権力による弱い者イジメ以外の何ものでもない。
しかも,民主党は,「国民の生活が第一」をスローガンに政権交代を果たし,社会保障の充実を謳って社会保障・税一体改革を推進し,消費増税法案を可決成立させるや否や,今度は「聖域なき歳出の効率化」を謳い,国民・市民の「生存」に直結し,それを底支えしている生活保護をあえて標的として削減しようというのである。言行不一致もはなはだしいものというべきである。
 
5 私たちは黙ってはいない!
 私たちは,こうした憲法無視や背信を許すことはできない。
 私たちは,心ある政治家に対して,歴史的な政権交代が起きた背景から目を背けず,憲法25条に基づく,所得再分配機能の強化,雇用と社会保障の充実に向けた政策提言と実行を期待する。
 また,厚生労働省に対し,年末の予算編成に向けて,国民・市民の生存権を守る立場に立ち,生活保護も含めて必要な社会保障予算については堂々と増額要求することを期待する。
 さらに,マスコミに対して,目下の日本の貧困者が置かれている状況を直視し,なぜそうした状況が生まれているのかを現場から取材し,事実に基づく冷静で科学的な報道をすることを期待する。
 そして,今の政治の動きに不信と憤りを抱くすべての人々に対して,ともに立ち上がり,声をあげ,行動することを呼びかける。私たちは,これ以上黙っていない。

以 上

第4回生活保護問題議員研修会

「生活保護200万人時代 地方行政に何ができるか」
 日 時  8月24日(金)〜25日(土)
 会 場  24日:さいたま市民会館うらわ(JR浦和駅西口より徒歩7分)
        25日:さいたま共済会館(JR浦和駅西口より徒歩10分)
【プログラム】
 1日目(受付11:30〜13:30)
   12:00 映画「渋谷ブランニューデイズ」上映(自由参加)
   13:30 基調対談「生活保護の歴史的分岐点に、生存権保障を考える」
        清川 卓史さん(朝日新聞記者)
        吉永 純さん(花園大学社会福祉学部教授)
   15:30 記念講演「子どもの貧困連鎖を断ち切るために」
        白鳥 勲さん(さいたま教育文化研究所事務局長)
   16:50 生活保護利用当事者の声を聴く
        埼玉・生活保護当事者の会「つながる会」

 2日目(受付8:45)
   9:00 分科会 
       第1分科会 生活保護なんでもQ&A
       第2分科会 生活保護費と地方財政(不正受給問題も視野に)
       第3分科会 貧困の連鎖を断つ学習支援の実践
       第4分科会 DV被害者を支援するために
   13:00 特別講座
       [?]HOW TO 生活保護同行支援
       [?]全国に広げよう「福祉オンブズマン制度」
       [?]雇用の現状と求職者支援制度を考える
       [?]メンタルケアが必要な方への福祉的援助
   スタディツアー・無料定額宿泊所を巡る
    →このツアーは、午前・午後1日行います。
   15:15 まとめ講演
       「『餓死』『孤立死』を生まない、生活保護行政をめざして」
        尾藤 廣喜さん(弁護士・生活保護問題対策全国会議 代表幹事)
   15:45 散会

来週は、いよいよ「反貧困全国キャラバン2012三重」です。

8月29日(水) 13時30分 桑名市役所へ申し入れ
?貧困対策全般、?生活保護行政、?餓死・孤立し対策、?生活支援戦略、?公契約条例について三重県の実態を伝えるとともに、改善の要請を行います。

 夕方、6時より、桑名駅前で相談会紹介のティッシュ配布活動

9月 1日(土) 津、桑名で同時に相談会(無料)開催
【相談会、桑名会場】場所 駅前サンファーレ2F市民広場
          時間 午後2時―5時
弁護士、司法書士、社会福祉士、ソーシャルワーカー等が生活保護や労働問題等の各種の生活相談に応じます。また、三重県保険医協会所属の医師も協力してくれますので、簡単な健康相談も受けられます。気軽に相談に来てもらうこと、ワンストップサービスを実現することを目指しています。相談の予約は不要です。
主催  反貧困全国キャラバン2012三重県実行委員会
連絡先 三重合同法律事務所 059−226−0451(木村)

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