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【17.11.08】 桑名で「国家賠償請求訴訟」が始まる

「家裁 (精神)鑑定行わず違法」、認知症女性の成年後見審判、名高裁 取り消し決定 (11月8日 中日新聞朝刊社会面より)

三重県桑名市が一時保護した市内の認知症女性(77)への成年後見人の選任を巡り、名古屋高裁が「本人の精神鑑定を経ておらず、手続きに違法がある」として、後見開始を決めた津家裁四日市支部の審判を取り消し、家裁に審理を差し戻す決定(註:後出、決定は1月10日付)をしていたことが分かった。家裁の決定を不服として、女性の家族が即時抗告していた。後見開始決定が覆るのは異例。
女性と家族は11月7日、本来不必要な後見の申し立てによって精神的な苦痛や金銭的な損害を受けたとして、申し立てをした桑名市と、国(家裁)に約513万円の損害賠償を求めて津地裁四日市支部に提訴した。(註:全国で初めての国家賠償請求訴訟)
高裁の決定で、藤山雅行裁判長は、市が提出した診断書や認知症の簡易診断の結果から「女性が高度の認知症を示すとまで言えない」と指摘。家事事件手続法が「(意思表示が全くできないなど)明らかにその必要がないと認めるとき以外、鑑定をしなければならない」と定めている一方、家族が提出した女性との面会記録からは「対話が一応成立」していることから、「明らかに鑑定の必要がないとは認められない」と結論づけた。決定は1月10日付。
高裁の決定後に行われた鑑定で、女性は軽度の認知症で、後見より軽い「補助」で足りると診断された。市はあらためて女性に補助人を付けるよう家裁に申し立てたが、女性が拒んだため、取り下げた。(註:認知症の症状が重い順に、後見人、保佐人、補助人がある)
女性は同居の次女(46)から虐待を受けている疑いがあるとして、市が昨年9月に一時保護(註:認知症女性の拉致事件、中日新聞が報道)し、後見人を付けるよう家裁に申し立てた。
本紙の取材に、次女は「母の認知症が進行する中で、対応に戸惑ったことはあるが、虐待した覚えはない。そもそも母は後見を望んでおらず、意思に反した市の行動は許せない」と話した。
一方、桑名市は「訴状が手元に届いておらず、その内容を確認した上で判断したい」としている。

<成年後見制度>
認知症や精神障害などで物事を判断する能力が十分でない人に、援助者を付ける制度。既に判断に支障がある際の法定後見、将来判断能力が失われた場合に備える任意後見の2種類がある。法定後見の場合、症状の重い順に後見人、保佐人、補助人が付く。後見人などは本人や家族、市町村の申し立てに基づき裁判所が決定し、財産管理や契約行為を代行する。

鑑定実施 全体の1割(註:制度に詳しい佐藤彰一国学院大教授の話)
成年後見制度で実施を原則義務付けながら、精神鑑定が実際の運用現場で行われているのは、全国の家庭裁判所が後見人や保佐人を選定した案件全体の1割にすぎない。法の形骸化とも言える状況が生じており、背景には、後見人の選任や監督を担う家裁の過剰な負担などの課題が浮かぶ。
最高裁家庭局の資料によると、後見開始の審判で鑑定が行われた割合は、現在の統計方式になった2008年度の27.3%をピークに、一貫して減少している。昨年は9.2%で過去最低を更新した。
一方、後見開始の申立件数(補佐や補助などを含む)自体は、社会の高齢化を背景に、3万4000件台を維持。10年前の1.4倍に相当し、高止まりの状況だ。家裁の申立件数が減る一方、市町村と、市町村の関与を背景にした本人の申し立てが増加している。昨年5月の成年後見制度利用促進法の施行を追い風に、市町村絡みの申し立てはさらに増える見込みだ。
制度に詳しい佐藤彰一国学院大教授(権利擁護)は「裁判所の負担過剰を背景にした(鑑定を義務付けた)手続法の形骸化は深刻だ」と指摘。申立件数の増加に加え、後見人の監督業務も年間1万人前後の規模で増えており、家裁の業務を圧迫しているという。
佐藤教授は「監督業務を家裁以外が担うなど、制度の見直しが必要。精神鑑定に過大に頼った判断のあり方も、本人や家族が置かれた支援の環境などを反映できる仕組みを加えるなど、改めるべきだ。現行制度のむやみな推進は状況を悪化させかねない」と訴える。(中日新聞より加筆、転載)

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