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【17.10.19】 今日の一般紙から総選挙の主張

「毎日」は北朝鮮問題、「日経」は成長戦略、「中日」は原発問題、「朝日」は沖縄問題、を取り上げる。

「毎日」は北朝鮮問題 北朝鮮の脅威「国難」と言うのならば
北朝鮮の核・ミサイルの脅威が増大し、安倍首相が「国難」と言う中での選挙である。
が、その割にミサイル防衛(MD)をめぐる論議が熱を帯びないのはなぜだろう。万々が一、日本にミサイルが飛来した時の命綱のはずなのだが。
各党の公約を見ると、自民党は「陸上配備型弾道ミサイル防衛システム(イージス・アショア)」の導入に前向きで希望の党もMDに言及している。
だが、米軍と米防衛産業が開発を競うMDはどこまでミサイル迎撃に有効なのか、国民の判断材料はあまりに少ない。
実は政治家もよく分かっていないのではないか。たとえば2007年に久間防衛相(当時)は講演で、敵ミサイルはMDシステムで「99%は排除できる」との認識を示した。
ところが09年には鴻池官房副長官(同)が国会で「ピストルの弾同士が当たるのは、なかなか難しい」と述べた。迎撃はほぼ不可能との見方だろう。
政権与党(自民)の要人が正反対のことを言うようでは納税者の立場がない。MDの有効性を日本側が主体的に評価・判断し、日米合同の迎撃実験の結果などを踏まえて国民的な議論を深める必要があるはずだ。
思い出すのは00年、ノーベル賞を受けた米国の科学者50人が、米国のミサイル防衛システム(当時の呼称はNMD)の配備に反対する書簡をクリントン大統領に提出したことだ。
その根底には技術的可能性への疑問がある。半面、MDの技術は進歩している。問題なのは、その辺を踏まえた議論が、MDのお得意様の日本ではほとんどなされてこなかったことだ。
米国の実験を何度も見学した私は、MDには限界があり過信すれば外交を誤りかねないと考える。ミサイルの脅威を取り除く上で米国の科学者たちが重視したのはやはり外交だった。
首相の言う「国難」は一日にして生じたわけではない。1998年に日本を飛び越えるミサイルを発射して以来、北朝鮮が目指すところは明白だった。
では日本政府は危機を未然に防ぐ外交を強力に展開してきただろうか。高価なMDは国民の安全を確かに守れるのか。為政者が「国難」と言う時はそれらの点も問われるはずだ。

「日経」は成長戦略 具体策のない成長戦略では成長できぬ
経済協力開発機構(OECD)によれば、日本経済の実力である潜在成長率は0.7%程度である。人口が減るなかで実力を高めるには、生産性を上げねばならない。衆院選でその具体策をめぐる論戦がほとんどみられないのは残念だ。
自民党は公約で、ロボット、あらゆるモノがネットにつながるIoT、人工知能(AI)などによる「生産性革命」を掲げた。着眼点は正しくても、スローガンだけが先行している印象だ。
「大胆な税制、予算、規制改革などあらゆる政策を総動員する」というが、その中身を語らなければ単なる決意表明だ。
いかに人材を成熟企業から成長企業へと円滑に移動させるか。成長力の乏しい企業を退出させるか。こうした新陳代謝を促す構造改革も各党は語るべきだ。
AIやIoTなどによる技術革新の促進を唱えているのは希望の党も同じだ。問題は「大胆な規制・社会変革」の中身がいまひとつ判然としないことだ。
生産性上昇のカギを握るのは規制改革だ。新規参入を促して競争が活発になれば、民間の創意工夫で画期的な商品やサービスを生みやすくなる。
それなのに規制改革の具体策といえば、日本維新の会が株式会社の農地所有の解禁や解雇紛争の金銭解決などを訴える程度だ。立憲民主党は「再生可能エネルギー・省エネ技術への投資」に力点を置き、規制改革を素通りしている。
一般の乗用車の相乗り(ライドシェア)を認めるのか。IT(情報技術)を使った遠隔服薬指導や遠隔診療を認めるのか。社民党は「相乗り反対」を明言しているが、他の党もこうした各論への賛否を明らかにしてほしい。
保護主義的なトランプ米政権の誕生や、英国の欧州連合(EU)離脱決定があっても、経済のグローバル化の流れは止まらない。
日本はアジア太平洋地域の成長力を取り込みつつ、自らも農業などの市場を開いて地域の成長に貢献する。そんな通商政策も大事な成長戦略だが、公約に掲げなかった各党の問題意識は低すぎる。
具体策のない成長戦略では、成長できない。各党は分配やバラマキに熱心な一方、ときに痛みも伴う構造改革から目を背けている。

「中日」は原発問題 どうする原発 福島を直視しているか
衆院選公示直前の今月4日、原子力規制委員会は、東京電力柏崎刈羽原発が、3・11後の新基準に「適合」すると判断し、福島の事故を起こした東電に、原発を運転する「適格性」があると認めた。
9月末、国と東電は廃炉への工程表を改定し、福島第一原発1、2号機のプール内に保管されている使用済み燃料の取り出しを3年間、延期した。
メルトダウン(炉心溶融)で溶け落ちた燃料デブリ(固まり)の取り出しに至っては、その方法の決定すら1年先延ばしになった。
公示の当日、福島地裁は、原発事故でふるさとを追われた福島県住民らの訴えを認め、国と東電に賠償を命じる判決を言い渡した。
被害者への賠償が不十分との司法判断だ。
事故処理の費用は総額22兆円に上ると見積もられ、さらに増大する見込みという。そのツケは国民にも回される。
福島県からの避難者は、いまだ5万人以上に上る。
後始末の道のりは遠く険しい。
これだけを見ても、東電のどこに「適格性」があるのだろうか。廃炉や賠償の進展を上回るスピードで、福島の風化が進んでいるのではないか。危険である。
3・11以降、各種世論調査では、原発依存からの脱却を求める声が常に過半数を占めている。
福島を、原発をどうするか。世界が、風力やバイオマスといった再生可能エネルギーへの切り替えを加速させていることなども考え合わせ、今回の選挙でも当然、重要な争点にされるべきである。
自民党は原発維持、野党のほとんどが将来、または即座に原発ゼロ、与党の公明党も、将来的には原発ゼロ。維持かゼロかの対立軸は明らかにされている。
にもかかわらず、首相は公示後の第一声を福島で上げながら「原発推進」を語らなかった。立地地域での議論も低調だ。これはおかしい。
原発維持派には、原発の安全確保や、万一の事故の備えに国としてどのように関与していくか、脱依存派には、代替エネルギーの普及策、立地地域の振興策など。そして核のごみをどうするか。双方に聞きたいことは山ほどある。フクシマの現状を直視して、具体的に語るべきである。
今フクシマに正しく向き合わないと、私たちの未来は、それこそ危険にさらされる。 

「朝日」は沖縄問題 辺野古の海 沖縄だけの問題か
沖縄における衆院選最大の争点は、引き続き米軍の普天間飛行場問題だ。名護市辺野古への移設阻止をかかげる翁長知事を支持する「オール沖縄」勢力と、容認の自民候補者が4選挙区すべてで対決する。
移設の是非がはっきり争われた3年前の名護市長選、県知事選、衆院選、そして昨年の参院選は、いずれもオール沖縄側が制した。それでも政権は辺野古の海の埋め立てに突き進む。
くり返し示された民意は何だったのか。選挙による意思表明が通らないなら、どんな方法をとればよいのか。沖縄は、失望といら立ちの中にある。
日本の安全保障政策を考えれば、沖縄には受け入れてもらうしかない。歴史や地勢上の特殊要因があるからやむを得ない。そう考える候補者や有権者も、少なくないかもしれない。
だが、辺野古が突きつけているのは、基地を造るかどうかという問題だけではない。
中央政府が強大な力を行使して、特定の自治体に重い負担を迫ってきたとき、その自治体はどう声をあげ、いかにして住民の生命や財産、環境を守るか。地方自治にとって根源的なテーマが問われている。
たとえば政府はいま、辺野古の海底の形状を変える岩礁破砕を、知事の許可なしに進めようとしている。「地元漁協が漁業権を放棄する議決をしたので許可は不要だ」と説明する。しかしこれまで水産庁は、議決だけでは漁業権は消滅しないという見解を示していた。
いつ、どんな理由で、いかなる手続きで考えを変えたのか。県の重ねての問いにも誠意ある回答はない。そこには行政の継続も、安定も、信頼もない。
あきれる話は他にもある。
防衛省は7月、埋め立て予定海域で絶滅の恐れがあるサンゴ14群体を見つけた。だが県に伝えたのは、うち13群体が死滅した後の9月。驚いた県が、保全策を協議するため工事を停止するよう行政指導しても、応じない。これが、前知事が埋め立てを承認した際に念を押した「環境保全」の現実だ。
全国各地でさまざまな公共工事が行われている。いわゆる核のごみの最終処分地選びも、この先、本格化する。
個々の自治体の声を聞いていたら話は進まない。国策なのだから我慢せよ。沖縄でやったのと同じことをするだけだ。
政府がそう言ったとき、地方はどうするか、何ができるか。
「辺野古」が浮き彫りにするこの国の政治の姿は、衆院選で問うべき重大テーマである。

「読売」だけは、昨日私も触れた日米経済対話

読売 日米経済対話 ごり押しの交渉には乗れない
日米貿易について両政府の思惑の違いが浮き彫りとなった。貿易赤字を目の敵にする「米国第一」は、双方の利益にならない。日本は、その点を粘り強く説かねばなるまい。
麻生副総理兼財務相とペンス米副大統領をトップとする日米経済対話がワシントンで開かれた。4月の東京会合に続く2回目だ。
ペンス氏は、日本との自由貿易協定(FTA)に「強い関心」を示した。麻生氏は、米国が離脱した環太平洋経済連携協定(TPP)の意義を改めて強調し、議論は噛(か)み合わなかった。
日本が米国とのFTAを警戒する理由は、トランプ政権の基本姿勢にある。米国の貿易赤字を相手国による一種の「搾取」と捉え、相手国側に是正する責任があると一方的に押しつけるからだ。
トランプ氏の大統領選勝利の原動力となった、米製造業地帯の支持を強く意識していよう。
貿易収支の赤字は、米消費者の利益となる安価で高品質な製品の輸入が多いことを表している。
そうした現実には目を閉ざし、自説に都合の良い面しか見ようとしないのは、トランプ政権に顕著な傾向と言える。
超大国の立場を振りかざす態度も問題が大きい。北米自由貿易協定(NAFTA)見直し交渉では米国にのみ特別扱いを求める。米韓FTAは協定の破棄をちらつかせ、韓国に再交渉を呑(の)ませた。
日本政府は、たとえ日米FTA交渉に臨んでも、米国以外の市場開放も期待できたTPP交渉以上の譲歩は難しいという立場だ。
米国が農産物の関税などでTPP以上の撤廃・削減を要求するようだと、重要な同盟国である日米の関係悪化は避けられない。
日本政府内には、米政府が当面、NAFTAと米韓FTAに注力するため、対日交渉の本格化は、まだ先になるとの見方がある。
その時間を無駄に費やしてはならない。日本は、保護主義を強める米国が、自由貿易体制に回帰する環境の醸成に努めるべきだ。
第一は、米国を除く11か国のTPPを着実に動かし始めることである。暫定的な協定内容を迅速にまとめ、目標とする11月の首脳合意を果たしたい。
日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)も年内に最終合意すれば、米国を多国間枠組みに振り向かせる契機となろう。
トランプ氏は来月初旬、来日する。首脳間の信頼関係を深めて、早期に貿易摩擦の芽を摘む建設的な協議が求められる。

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