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【17.09.09】 子どもの医療費窓口負担無料化の必要性

9月8日、しんぶん赤旗(2017焦点・論点)より

昨日のしんぶん赤旗(2017焦点・論点)に、8月末の「生活保護問題議員研修会」で勉強してきた健和会病院(長野県飯田市)副院長の和田浩先生のインタビューが出ていました。記者の内藤真己子さん(桑名の介護保険も取材、日福大卒)に確認したところ、彼女は研修会を取材していたそうです。

8月末に「生活保護問題議員研修会」に参加してきました。(私の報告から)
その中で長野県(窓口無料化が行われていない数少ない都道府県の1つ)の小児科医の「医療現場から見える子どもの貧困」と言う講演がありました。医療分野での子供の貧困対策として最優先課題は「子どもの医療費窓口無料化」だと訴えられました。無料化を導入したとしても500円の受益者負担の誤りも指摘され、「窓口無料化」は貧困解決の第1歩に過ぎないという事です。群馬県では、2009年10月から実施し、診療時間以外の受診件数は7.3%減っているそうです。

診察室から見える子どもの貧困

医療費心配し、受診控え病状悪化 国は窓口無料への罰則全廃を(2017焦点・論点) 日本外来小児科学会「子どもの貧困問題検討会」代表世話人 和田浩さん

深刻な子どもの貧困。その克服のためにも子どもの医療費の完全無料化は喫緊の課題です。ところが政府は窓口負担の無料化・軽減に取り組む自治体に国庫負担を減額する罰則を科しています。来年度から罰則の一部廃止を決めましたが、全廃には至っていません。全国知事会が8月、加藤勝信厚生労働相らに全廃を要請しています。日本外来小児科学会「子どもの貧困問題検討会」代表世話人で、健和会病院(長野県飯田市)副院長の和田浩氏に聞きました。(記事・写真 内藤真己子)

―貧困は子どもたちの健康にどんな影響を及ぼしていますか。
私も参加した佛教大学総合研究所共同研究「脱貧困プロジェクト」が小児科の入院症例を対象に行った調査では、貧困層の子どもは貧困でない層にくらべ、繰り返しの入院が1・7倍も多く、ぜんそく発作での入院は2倍にものぼりました。(グラフ) 「経済的理由で受診を控えたことがありますか」という質問では、貧困層は非貧困層の4・3倍も受診を控えていることもわかりました。

―「子どもの貧困は見えにくい」とも言われます。
私も数年前まで、自分の患者さんにそういう人がいるのかわからない、どうすれば見えるようになるのかと考えていました。
2010年に日本外来小児科学会で開いた「子どもの貧困」のワークショップで、「定期通院に来ない場合に貧困があるのでは」という発言を聞き、ある患者さんが思い浮かびました。
母親も3人の子もぜんそくで継続した治療が必要なのに予約の日には来ず、発作を起こすと受診するのが常でした。そのつど定期受診の必要性を説明し、お母さんは「わかりました」と言うのですが、やはり来ないという繰り返しでした。
次にお母さんが受診した時勇気を出して「予約日に来ないのは、もしかして経済的に大変だからですか」と聞いてみると、「実はそうなんです」と打ち明けてくれました。 長野県の子どもの医療費助成は「償還払い」で、いったん窓口で保険の定率負担を払い3カ月後ぐらいに一部負担金を除いた分が返ってくるのです。一家の月収は16万円でした。お母さんは「薬局で払う4人分のぜんそくの薬代は1万円を超えてしまうので、給料日のすぐ後でないと来られない。窓口無料だったら心配をしないですむのに」と言われました。
そのとき窓口無料化の大切さを身に染みて感じました。その母子は病院の職員がつきそって行政と交渉した結果、生活保護を受給できました。それで医療費が無料になると、予約の日に1回も欠かさず通院しました。

―貧困家庭にとって子どもの医療費窓口無料化は切実ですね。
子どもの貧困をなくすには親の低賃金や不安定雇用の改善、教育無償化、社会保障など総合的な改革が必要です。医療分野では完全無料化が最優先の課題です。
住民の運動で、就学前ではすべての自治体が何らかの医療費助成を行うようになっています。しかし政府は、窓口負担を無料化・軽減している「現物給付」の自治体に、国民健康保険への国庫負担を減額する罰則を科してきました。「窓口負担が減ると受診が増え医療費が増える」というのが理由です。「償還払い」に罰則はありません。
昨年末、政府は方針を転換し、来年度から就学前に限っては罰則を廃止することを決めました。粘り強い運動や自治体の要請が国を動かしたのです。ところが小学生以上の助成の「現物給付」には罰則が残ったままです。全体の約7割の自治体で今後も国庫負担の減額が続きます。
子どもは、小学生以上になると風邪をひきにくくなり、病院にかかることが少なくなります。小学生以上で医療が必要な子どもでは、ぜんそくや発達障害など根気強く通院することが必要な病気の比率が大きくなります。そういう子どもが治療を中断しないために、対象年齢の引き上げや窓口無料化を広げる必要があります。国は、自治体が施策を拡充する制約となっている国庫負担の減額措置を全廃するべきです。

―助成では4割程度の自治体が一部自己負担を求めていますが。
償還払いだった長野県の子ども医療費助成も来年8月から、中学卒業まで全市町村で現物給付とすることになりました。大きな前進ですが、1回500円の一部負担金は今後も続けるとしています。
「500円位払えないことはないだろう」と考える人も多いと思いますが、500円がなくてかかれないという家庭の子どもは実際にいます。でも、そういう事はこちらから聞かない限り、患者さんの方からは言ってくれないので、分らないのです。
「完全無料化すると休日夜間の受診が増え医療崩壊につながらないか」という意見もあります。
群馬県では2009年10月から中学卒業までの医療費を完全無料化しました。実施直前の4月から9月までの半年間と、実施後翌年の同期間の「診療時間以外の受診件数」(群馬県市町村国民健康保険被保険者による)を見ると、実施後の方が7・3%減っていました。先ほどの、ぜんそくの親子も昼間、発作が起きたのにお金がなくてがまんしていて、夜になって悪くなってかかったということが何回もありました。窓口無料でそういうことはなくなるのです。
子育て支援策、子どもの貧困克服の為、自治体による完全無料の医療費助成を広げる事、更に国の制度として子どもの医療費無料化を実現する事が強く求められます。

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