活動日誌−活動日誌

【17.05.31】 朝日と毎日が「加計学園問題」、読売と日経は「日本再興戦略2017」

加計学園問題 論点をすり替えるな 

【朝日社説】
安倍首相の友人が理事長を務める学校法人「加計学園」の獣医学部新設計画をめぐり、前文部科学事務次官の前川氏が新たな証言をした。
昨年9〜10月、和泉首相補佐官に首相官邸に複数回呼ばれ、新設を認める規制改革を早く進めるよう求められた。和泉氏はその際、「総理は自分の口から言えないから、私が代わって言う」と述べたという。
事実なら、すでに明らかになった内閣府からの求めに加え、首相補佐官も「総理」の名を直接あげて、文科省に働きかけていたことになる。
証言は、「国家戦略特区」という政権の目玉政策に公私混同があった疑いを抱かせる。国政への信頼がいっそう揺らいでいることを政権は自覚すべきだ。
信じられないのは、事実関係を調査し、国民に対して説明する姿勢が首相らにまったく見られないことだ。
菅官房長官は記者会見で政府として調査はしないとし、「前川さんが勝手に言っていることに、いちいち政府として答えることはない」と突き放した。
首相は国会で「改革を進めていくうえでは常に抵抗勢力がある。抵抗勢力に屈せずにしっかりと改革を前に進めていくことが大切だ」と述べた。
だが今回、問われているのは特区で獣医学部新設を認めることの是非ではない。トップダウンで規制に風穴を開ける特区である以上、首相が指導力を発揮すること自体は当然あろう。
問題はその手続きが公平、公正で透明であるかどうかだ。
行政府として当然の責務を安倍政権は軽んじている。そう思わざるをえない証言や文書がこれだけ明らかになっている。
特区であれ、通常の政策であれ、行政府として、それを進める手続きが妥当であると国民や国会から納得がえられるようなものでなくてはならない。
なのに首相は自ら調べようとせず、「私が知り合いだから頼むと言ったことは一度もない。そうではないというなら証明してほしい」と野党に立証責任を転嫁するような発言をした。考え違いもはなはだしい。
政府が説明責任を果たさないなら、国会が事実究明の役割を担う必要がある。前川氏はじめ関係者の国会招致が不可欠だ。
自民党の竹下国会対策委員長が前川氏の証人喚問について「政治の本質になんの関係もない」と拒んでいることは、まったく同意できない。
問われているのは、政治が信頼に足るかどうかだ。それは政治の本質にかかわらないのか。

【毎日社説】 
なぜ、安倍首相と与党は解明を拒み続けるのか。
学校法人「加計学園」の獣医学部新設を巡る問題で、首相は「法令に基づき適切に手続きを進め、圧力が働いたということは一切ない」との国会答弁を繰り返している。
文部科学省の前川前事務次官が「本物だ」と証言した「総理の意向」と記された文書に関しては「文科省の調査で確認できなかった」と答えるだけだ。
一方、自民党も「政治の本質に関係がない」(竹下国対委員長)と前川氏の証人喚問を拒んでいる。
幕引きをひたすら急ぐ、こうした姿勢に強い疑問を抱く。
前川氏は昨秋、和泉首相補佐官から官邸に呼ばれ、獣医学部新設を急ぐよう直接求められたことも新たに明らかにしている。
安倍首相の長い友人だったから加計学園に有利な手続きが急速に進んだのか。そこに首相の意向は働いたのか。あるいは内閣府などが首相の意向を忖度したのか。そして前川氏が証言したように「行政はゆがめられた」のか−−。
まさにこれは公正でなくてはならない政治の本質の問題である。いずれの疑問にもまだ答えは出ていないにもかかわらず、首相はそんな疑問を抱くことそのものが「恣意的な議論だ」とまで答弁している。
そもそも行政の記録文書は、行政が公正に行われていたかどうかを後に検証するために残すものだろう。
首相らは文書の存在を認めると、これまでの全ての説明が揺らいでしまうと恐れているのだろうか。もはや怪文書などとは言えない状況なのに、「あるものを無かった」というような姿勢を続けること自体、既に行政をゆがめていると言っていい。
首相は、「国家戦略特区」で既得権益を打ち破り、規制を緩和して獣医学部を新設する意義を強調している。だが、その政策判断が間違っていなかったかどうかは事実関係を確認したうえで検証すべき次の課題だ。
手続きが適正だったと言うのなら、堂々と当事者を国会に呼んで話を聞けばいい。前川氏も応じる意向を示している証人喚問を行い、和泉氏らの説明も国会で聞くことだ。安倍首相が出席して衆院予算委員会の集中審議を開くことも必要だ。

成長戦略、なぜ成果を出せないのか、新産業創出の実績が見たい 

【読売社説】
目新しいメニューを並べるだけでは、日本経済の底力は強まらない。
政策を着実に実行することが欠かせまい。
政府は、アベノミクスで5回目の成長戦略「日本再興戦略2017」の案をまとめた。
生産性を高める第4次産業革命の実現が柱だ。物流などの「移動革命」、医療などの「健康」、「金融」といった戦略5分野に政策資源を集中投入する。
具体的には、ドライバーが運転する1台のトラックを複数の無人車両が追従する隊列走行を、20年までに高速道路で実現する。ドローンによる無人配送も20年代に都市部で行うことを目指す。
物流効率化は、運送業界で深刻な人手不足の解消に役立とう。
健康分野では、人工知能(AI)を活用した遠隔診療の普及促進策などを盛り込んだ。
医療サービスの充実を通じて健康寿命を延ばし、働き手を増やす効果が期待できる。
ロボットやAIなど新技術を活用し、新しいビジネスを創ろうという政策の方向性は妥当だ。
気がかりなのは、過去4回の成長戦略が目に見える成果を上げていないことだ。
AIなどを活用した生産性向上の取り組みは、個々の大企業では進んできている。だが、他企業とデータを共有するなど、業種を超えた動きには至っていない。特に、小売業など非製造業の生産性は世界的にみて低い。
政府は、過去の施策の問題点を包括的に洗い直し、戦略を修正、改善する必要がある。
カギを握るのは、規制緩和策だ。働いた時間ではなく、成果に応じて賃金を決める「脱時間給」制度の実現は遅れたままだ。成長が見込める農業分野でも株式会社の参入が遅れており、経済活性化には力不足が目立つ。
政府の規制改革推進会議が今年5月にまとめた答申は、混合介護の拡大策を先送りするなど、全体に小粒な印象が拭えない。
今年の成長戦略では、新産業育成のため、期限を定めて規制を縮小する「レギュラトリー・サンドボックス」制度が創設された。
一例として、電波法の規制緩和による電力線の通信利用を挙げている。中小企業でもコストをかけずに、効率的な生産管理などが可能になるという。
有望分野で大胆な規制緩和を行えば、新しい産業を生み出すことにつながろう。政府は、聖域なく規制を見直し、日本の潜在成長率を引き上げるべきだ。

【日経社説】
政府が今年の成長戦略(日本再興戦略)の素案をまとめた。人工知能(AI)やビッグデータ、ロボットを活用し、さまざまな社会課題を解決する「ソサエティー5.0」の実現を掲げた。
その目標が悪いわけではない。問題は、安倍政権が過去の成長戦略で示しながら、なお実現できずにいる難題と十分に向き合っていない点である。
日本経済の最大の課題は成長力の強化と、財政健全化の両立である。日銀による異次元の金融緩和と、2度にわたる消費増税延期で時間を買っている間に、経済の実力を高めることができたか。
残念ながら、日銀の推計では、日本経済の潜在成長率は2014年時点の0.8%台から16年後半に0.6%台まで下がった。この厳しい現実を政府は直視する必要がある。
安倍政権は法人税の実効税率を20%台まで下げ、農業や医療などの岩盤規制改革に取り組んだ。企業統治も強化した。
さらに今年の成長戦略が、IT(情報技術)を使った医療・介護の効率化策を示したのは妥当だ。高速道路での自動運転や、金融とITを融合したフィンテックの推進を打ち出したのも理解できる。
しかし、こうした新政策を次々と繰り出す一方で、過去の政策目標が未達に終わった原因をしっかり分析していない。数値目標を言いっ放しで、軽々しく扱うのは民間企業ではあり得ない対応だ。
たとえば、20年までに世界銀行のビジネス環境ランキングで「先進国3位以内に入る」という目標を掲げながら、昨年時点の順位は26位まで下がってしまった。
ほかにも「開業率・廃業率を米英レベル(10%台)に」「外国企業による対内直接投資残高を倍増」といった目標の達成はほぼ絶望的だ。新陳代謝を促す規制改革や、信用保証制度の見直しなどが不十分だからではないか。
時間に縛られない「脱時間給」という働き方を解禁する労働基準法改正案は国会で棚ざらしにされ、一般の自家用車で利用客を送迎するライドシェア(相乗り)のサービスは進まない。
100ページ超に及ぶ文書をまとめて「やってる感」を国民にアピールするだけでは困る。決めたことを着実に実行する。結果を厳しく検証し、不断の改革に挑む。そんな政策のサイクルを徹底していない政府に猛省を求めたい。

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