【09.09.03】 昨日の質疑に関連する伊勢新聞の記事
委員会付託なしで即決採決
桑名市火葬場建設工事 実名で談合情報提供
【市に寄せられた談合情報の文書コピー】
桑名市発注の「（仮称）桑名市火葬場建設」に関する二件の工事入札で、談合情報が同市に寄せられ、いずれも情報通りの業者が落札した。同市は入札参加業者に事情聴取したが、いずれも「談合は確認できなかった」と結論付けた。結論はこれまで市に寄せられたそのほかの談合情報と同様だが、今回の情報がこれまでと異質なのは、情報提供者が匿名ではなく、実名を明らかにしている点だ。情報では、落札業者名とともに、一件の入札では市外部の者が本来知り得ない入札参加業者名まで指摘している。当然、これを機にあらためて市内部の入札情報の取り扱いについて徹底した点検、見直しが求められるが、実名の情報提供者の事情聴取を見送った市の対応を見る限り、�猩海┐き瓩陵�無の確認や漏えい個所を特定し、ふさぐことに向けた、努力や作業の跡は見られない。市が熱意を示したのはむしろ議会議決の方で、同火葬場建設工事に関する契約議案を九月二日の市議会開会日に委員会付託抜きで採決することを議会に求め、市議会議会運営委員会（小林悟委員長）は先月二十六日、原則と異なる例外として、即日採決の日程を賛成多数で決めている。
（特報部長・竹本剛）
■実名提供
今回、談合情報が提供されたのは、桑名市発注の「（仮称）桑名市火葬場建設(建築）工事」と「同火葬場建設（給排水・衛生設備）工事」の二件。入札方式は、いずれも「事後審査型条件付一般競争入札」。札入れは、入札額を書いた「入札書」を郵便で市に送る「郵便入札」の手続きを採用。ともに予定価格は事前公表で、「建築」が十三億三百九十二万三千六百円（税込み）、「給排水・衛生設備」が八千六十五万九千九百五十円(同）。
この二件の工事入札について、事前に落札業者を名指しする、いわゆる「談合情報」を市に実名で提供したのは、会社社長森岡一智氏(63)＝四日市市笹川七丁目。情報はいずれも桑名市の水谷元市長あての内容証明郵便の形で文書提供した。同文書は一件につき二通の計四通に及んだ。
■「建築」工事
経営審査点数など入札参加要件などを一般公表する、建築工事の「入札公告」は七月十日。入札額算定の基礎となる「設計図書」の販売期間は公告日から同月十七日まで。事実上の入札参加申し込みとなる「技術資料」の提出締切日時は同月二十七日午後四時に設定し、入札額を書いた入札書の郵送締切日は翌八月十日。入札書を開封する入札執行日が同月十二日で、この日、落札候補者が決定した。
市契約監理課によると、一連の入札手続きの中で、森岡氏の最初の文書（第一文書）が市役所に届いたのが、入札書郵送締切日三日前の八月七日（郵便局の差し出し証明日付は八月六日付）。
内容は、業者名を挙げて「今回の入札は二社のみ」▽「設計図書の購入は三社」▽二社で「調整行為が行われているという可能性があります(談合の疑い）」―と三点を指摘。
落札業者名を明示したのは、二通目の文書（第二文書）。市契約監理課によると、入札書郵送締切日の八月十日に市に届いた、という（郵便局の差し出し証明日付は八月七日）。第一文書で指摘した入札参加業者のうちの一社を、落札業者と指摘した上で、たとえ、落札業者名が「正しかった」（的中した)場合でも、市は、業者への形式的な聴き取りで済まし、「強引に契約をする」と結んだ。
市契約監理課によると、森岡氏がいずれも事前に指摘した、入札参加業者名、設計図書購入業者名は、入札の適正公正な執行のため、入札終了後の一般公表まで市職員には「守秘義務」が課せられている情報。市の委託を受け、設計図書は市内の民間業者が、参加業者らに販売するが、この民間業者に対して市は「外部に設計図書購入業者名を公表しないよう口頭でお願いしている」。
同課は、入札参加業者名、落札業者名が森岡氏指摘の情報通りだった点は認めるが、設計図書の購入業者数については「合っていたか、合っていなかったか、いずれともお答えできない」と同二十八日現在、取材に回答している。
落札業者名はもちろん、本来、外部の者が知り得ない入札参加業者名が、いかなる経路をたどって事前に森岡氏に耳に届いたのか。それとも森岡氏が単なる当てずっぽうや、あるいは公開情報の推理で指摘したことが、たまたま一致しただけなのか。市は先月二十六日の定例市長会見で「どのように参加業者名が事前に外部に漏れたかは分からない」（城田直毅総務部長）としている。
一方、森岡氏は取材に対し、市役所をよく訪れ、一般立ち入り禁止のカウンター内に顔パスで出入りしている人物(民間人）が、外部への情報の「発信源」と指摘する。市役所内でこの人物とよく顔を合わす別の男性(78)は「昔、県桑名庁舎の建設工事部署のカウンター内でパソコンをいじっている姿を目撃したこともある」と話すほど、目立つ人物だ。
森岡氏の第一文書投函前に、事実上の申し込みに当たる「技術資料」の提出業者名を内部で知り得たのは、提出業者名の報告を市契約監理課から文書で受けた八月五日開催の「桑名市請負工事等指名審査会」のメンバーだ。同会は副市長以下の関係各部長らで構成されている。
市契約監理課の担当者によると、札を開ける開札日前の八月十一日には、建築住宅課の職員から入札書の郵送業者名を聞かれ、口頭で教えた、という。入札終了前に入札事務担当課以外の課に伝える必要があるのかどうかの検討も含め、入札情報の取り扱いルールの明確化と慎重な取り扱いが今後、望まれる。